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ふわりふわり。重力など忘れて揺蕩う薄氷の翅。舞う蝶の羽ばたきさえ聞こえそうな空間。先程と変わらない幻想的な舞台を急速に転換させた存在。
トントン書記長。
軍の実質的No.2に座する彼の威圧と緋の眼が、この夢うつつの世界で唯一確かなものとなって私を見下ろしていた。
「…………」
「………あの」
この娘どうしてくれようか。眇められた目がそう思案しているようにみえ、彼が口を開くより先に立ち上がった。
「すいませんでした…セキュリティ区画だと知らなくて。すぐ退出します」
「待てや」
鼓膜を刺した硬質さ。たった一言だけの端的な指示にピタリと止まった私から、トントン書記長はふいに机の上へ視線を移した。
「食いもん粗末にする気か？」
半分だけ食べられたケーキが2つ。そして飲みかけの紅茶。彼の強い問いかけ、という名の質問の体をなした命令にぐうの音も出なかった。しかし逆に言えば今すぐ出ていかなくていいとも受け取れ、私がぎこちなく座り直すと、その正面に書記長がどしりと腰掛けた。
「メイド。新しい珈琲…は頭痛くなるな。紅茶くれ」
すぐに取り替えられたカップに透き通るオーカーが注がれ、ふわりと甘く香った匂いは彼のイメージとはあまり合わない気がした。そんな失礼なことを思いながらおずおずとケーキを切り分け口に運び始める。
「…甘いの好きなんか」
「そう、ですね。でもあまり甘すぎないお菓子が好きです。ゾムさんはよくお土産をくださって、前にアーモンド型の焼き菓子が、」
じっと観察されるのに緊張しながらジャブのように繰り出される質問に愛想良く答えた。その間にも頬杖の上ではいくらか和らいだ眼光、緩んだ口元から天に向かって生えた下顎の牙、短い剛毛で包まれた三角の耳が緩慢に動く。温室に差し込んだ暖かい陽光で書記長の冷ややかさがゆるりと溶けていくのが垣間見えた。
「あー…なんかお前とおると眠くなるな……ん？なんや？」
「このケーキももらっていいですか？」
「は？」
言いながら書記長が机の端に避けていたケーキを手元に移動させると逞しい首が傾いて同時に眼鏡が鳴った。遠回しに食べ物を粗末にするなと注意した彼がダメだと言うはずがないので早速食べ始めると本日何度目かのため息が聞こえた。
「それグルさんの……はぁ、ええよゾムには内緒にしたる」
「ありがとうございます。食べすぎは怒られますから」
「ちゃう。そうやなくて、…あーもう。俺が考えすぎたわ」
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あまぎ(プロフ) - 亞さん» 嬉しくてニヤニヤニチャニチャしてます！！！物書き冥利に尽きると申しますか、言われて嬉しい言葉を3つも織り込んでくださっていてめちゃくちゃ飛び跳ねてます今！やったー！ありがとうございます！これからも褒めて貰えるように文章頑張りますー！ (2021年4月6日 7時) (
レス) id: 975a9486c5 (このIDを非表示/違反報告)
亞 - 設定がしっかりしていて、さらに場の雰囲気が想像出来る、、めっちゃ読みやすいです！続編楽しみにしてます！ (2021年4月5日 20時) (レス) id: a5aad03a9c (このIDを非表示/違反報告)
あまぎ(プロフ) - アルカさん» あのお風呂シーンは私も表現やアウトゾーンに悩みながらzﾑ視点で書きましたので、夢主のドキドキをお伝えできたなら満面の笑みでニッコリです！やったー！これからもきゅんきゅんして頂けるよう頑張りますね！コメントありがとうございました！ (2021年1月29日 17時) (レス) id: 975a9486c5 (このIDを非表示/違反報告)
アルカ(プロフ) - 読んでいるときゅんきゅんが止まらず、お風呂のシーン何か私まで顔を赤くして見ていました...。これからも更新頑張って下さい！ (2021年1月29日 14時) (レス) id: 710728be47 (このIDを非表示/違反報告)
あまぎ(プロフ) - こさゆさん» お褒めの言葉ありがとうございます！世界観は活かしきれてないところがまだあり、今後も好きだと言って頂けるよう精一杯広げて精進していきたいと思っています！嬉しいです…見てくださる方がいる事実で更新頑張れます…！これからもよろしくお願いしますー！ (2021年1月26日 21時) (レス) id: 975a9486c5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あまぎ x他1人 | 作成日時：2020年7月4日 14時
