私が恋をしたのは……【3】 (ページ19)

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……そう、だったんだ。
タイガに何があったかはわからないけど

「ホクト様の怪我なら数日で治るよ……
…っ、さっきもねコーチさんに絡まれながら
ご飯を食べてたし___」

だめだ……。こんな言葉、今のタイガにとって
何の救いにもならない……っ

言葉に迷っていると、
タイガの掠れた声が鼓膜を揺らす

タイガ「……10年前の"血染めの薔薇の日"だって、
そう……だった。俺は同じようにただ立ち尽くすだけ」

タイガ「ジェシーやリューセイ様が打ち損じた兵の
介錯をするだけで……精一杯だったんだ」

門番兵の人たちがタイガだけが身綺麗なまま
帰還したという話の裏側にあったのは、

……タイガだけが刃を振るわなかったからだ

タイガは人一倍、この国を守ろうとする人だ。
だから何か理由があるはずだよね……

絞り出した私の声も、揺れていた。

「……人の命を奪うことが、怖い？」

タイガがぶんぶんと首を横に振ると、
黒曜石とロードサイドガーネットのピアスが揺れる

タイガ「戦場で戦うってことは人の命を奪うことも
あるってことだ…頭ではわかってる。わかってるのに…」

タイガ「………」

タイガ「……誰を殺せばいいのか、わからないんだ…っ」

10年前の戦争も今回の戦争も敵はオブジェクトで
だから手をかけないといけないとしたら、

その兵たちになる。

哀しいけれど……それは明確な答えなのに、
タイガはわからないと苦しそうに言う。

……もしか、して

絡まった糸が、次第に解けて心が波立っていく

その波はしだいに大きくなり、
まるで激しい波のような威力をもって
私の心を激しく揺さぶる

視線が絡まった瞬間、
タイガがまるで積年の想いを吐き出すように
一息で告げた。

タイガ「俺は確かにこの国の王子なのに……
この身体に流れている血が俺を迷わせる……っ」