77 金烏【天音 煉】 ページ31
俺の、誰かが、撫で…
半分覚醒しきれていないまま、目を開ける。
いつの間にか寝てしまっていたらしい。
「あ、…悪い、起こしたか?」
優しく微笑みかけてくれたのは、ニコ先輩。
嗚呼、後でルシファーの事言わないと。
「大、丈夫、ですよー」
「お前、絶対寝ぼけてるだろ」
「んぅ……そんらことない、です」
あ、凄い瞼重い…
「、?」
ニコさんの視線が俺の後ろへ動かされる。
重い瞼を動かして、持ち上げて、俺も其方へ視線を向ける。
三本足の、烏。
(すまない、主。マリー、という少女が我の代わりに仕事をしてくれた)
しょんぼりと項垂れた金烏に、手を伸ばして、頭を撫で、抱き寄せる。
(ありがとう、責任感じなくて、いいから)
力を込めて、精一杯太陽の力を流し込む。
あれ、そういえばさっき使いすぎてたんだった。
パリン、と光の粒子が飛び散って、金烏が消える。
首をかしげて此方を見ているニコさん。
「俺の、友達なんです」
「…そうか」
ニコさんは、やはり何も言わずに視線を窓へと向けた。
「ごめん。さっき目を覚ました時に、お前じゃなくてサマサだったら、
なんて、冗談だけど最低なこと思った」
「、気にしないですよ、その位の事なら慣れてますから。
何かお詫びがしたいなら、またピアノ聞かせてください」
俺、ちゃんと表情筋、動かせてるよな?
「はは、笑えてない笑えてない。そうだな、ありがと。
ピアノでよければ、ぜひ聞いてくれ」
ニコさんは、やっぱり優しいままで、俺は少し安心した。
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あの後俺は部屋を出て、自分の部屋で眠った。
それで、今に至る。
「あら、おはようございます煉様。今日も可愛いですね」
「…ッ」
ヒ、と情けない声が出て、思わず近くにいたアザキムの背に隠れる。
っていうか、しがみ付く。
「…どいていただけますか、人間」
「…嫌がってるだろ」
「貴方に関係はありません」
「……おい、離れろよ、俺なんかよりましな奴がいるだろ」
最初俺を気遣って対処してくれたアザキムは、なんともアッサリと降参した。
「アザキム、俺を見捨てるのか、酷い、…!」
「お前は犬か」
「煉様、私なら貴方を見捨てませ」
「黙れ!俺の近くによるなぁ!」
う、うわ、泣きそう もう嫌だコイツ、怖い…!
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