68 感じた、【天音 煉】 ページ22
“運命が憎い…!!”
突然頭の中で聞こえた、声。
ニコさん?…ニコさん、此処にいるのか…?
バッと目を開ける、能力の使い過ぎか痺れる手足。
驚いたのか、目の前には目を見開く白。
涙の、跡?
どうしよう、と迷ったのは数秒だった。
俺はすぐに、金烏を呼び出した。金烏は太陽の異名、三本足のカラスだ。
そっと頭の中に語り掛ける。
(頼みがある。聞いてくれ)
言葉を返さずに、此方を見る金烏。
(白が泣いていた、と)
(俺はどうすればいいかわからないから、力になってあげてくれ、と)
(黒に、伝えてはくれないか)
了解した、というように俺に頭を下げた金烏に、後で礼をしようと判断して、
白の制止も聞かずに部屋を飛び出した。
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ルシファーの声だ。
ニコ先輩の声だけど、でもルシファーの声。
聞こえてくる声に確信する。
一度ルシファーに会ったとき、眩しいが、暗い人間だな、と言われたことがある。
召喚者…ニコ先輩の次に、憑きたい人間だ、と。
だから、ニコ先輩を助けることが出来る筈だ。
俺の気配に気付いたらしいルシファーが、俺の目の前に現れた。
「ニコ先輩、じゃなくて、ルシファー…サマ、ですよね」
「これは、天音煉か。久しぶりだな」
「ええ、お元気そうで何よりです」
そういうと、満足気に目を細めるルシファー。
「昔お会いした時は、美しい男性のお姿でしたが、
今は召喚者の体を借りているのですね」
「嗚呼、とても便利な体だ。現世の体を失った私には都合のいい道具」
「…俺としては、前の貴方の方が好きですけどね」
「嬉しいことを言ってくれるな、天音煉」
クツクツと笑った彼は、突然眼光を鋭くした。
「して、天音煉、お前は何しに来た?私を騙しに来たのか?
…ただ私に会いに来たわけではなかろう」
「不正解、です。俺が此処に来たのは、
何よりも貴方に会いたいという気持ちが一番大きかった。
俺を前必要としてくれた貴方ですから。当然、騙すつもりもありません」
驚いたようで、俺を見つめるルシファーに告げる。
「それじゃ、駄目ですか?」
「…よかろう、こんな格好で会うのも気が引ける。
召喚者に、また私を呼べと伝えてくれ。今度は二人で話そう」
「ええ、お待ちしています、菓子でも用意して」
楽しみだなと笑ってルシファーが消えて、先輩が倒れる。
手足の痺れは収まるどころか酷くなる一方だったが、俺はニコ先輩を部屋へ運んだ。
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