らくだい魔女と幼なじみの約束 part7

何に対して？ ページ32

フウカside

　…それは唐突で。

　ドカ

　そんな重たい音がしたと同時にアサヒがベットからずり落ちた。

　そしてそれと同時にあたしは、チトセによって首根っこを掴まれたのである。

フ「ちょっとっ！く、苦し…。」

チ「自覚無しに襲うな。相手は男だからな。」

フ「そんなの知ってるってばっ…。」

チ「とにかく、黙れ。」

　そうピシャッと言いのけると、首根っこを持ったままあたしを引きずりながら部屋を出て行く。

ア「ちょ、アサヒっ？何気ぃ失ってんのよ起きてーっ！」

ユ「自業自得だろほっとけ。」

　そう言ってアサヒに呼びかけるアリスと呆れたユウの声が聞こえる。

　が、チトセはそんなの見向きもせずに

チ「お邪魔しました。」

　とにこやかに笑うと。

チ「立て、遅刻魔。」

フ「何ぃ引きずったのはチトセじゃんかっ！この女たらしっ！」

　二人でそんな言い合いをしながらアリスの部屋を出る。

　あたしが一歩部屋の外に踏み出した時に

あ「…あんの野郎……後で倍返ししてやっからなっ覚えてろよっ！」

　という声が聞こえる。

　うわ、倍返しだって。きっつ。

　そう思いながら自然とチトセを見ると、ジロリと後ろを睨んでいる。

チ「…やってみろよ。」

　チトセにしてはらしくない声に若干ビクリと肩を揺らしながら、あたしは部屋を出る。

　そしてバタンと扉が閉まった。









　タンタンと廊下に響く不揃いな足音。ヒンヤリした空気。

　…長々続く沈黙。

　チトセが一歩先を歩き、あたしはその後ろをついて歩く。

　気まずい。気まずすぎる。

　あたしはさっきから何したらいいか分からずに歩きながら、伸びをしてみたり目を泳がせてみたりあくびをしてみたり…と何かとソワソワしている。

　と。

　ピタリと足を止めたチトセがいきなり振り返って、あたしの腕を掴んだ。


　何――？


　口を開きかけるも、腕を取られてそのまま壁に強く叩きつけるように押し付けられた。

　顔を歪めて反射で閉じた目を薄く開いて、チトセを見た。

フ「ね、ねぇチトセ、い、痛い…。」

　そう言ってハッと目を開く。

　『何してんの離してよ。』

　そう開きかけた口を閉じて、もう一度口を開いた。


フ「…何で、怒ってるの？」


　チトセにはこういう事がよくある。


　俯いて表情が誰にも分からないようにして。


　それで人の話に応えてくれない。



　ねぇチトセは一体……



　――――一体何に対して怒っているの？

全部。→←勘違いはご遠慮ください。

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