ストロベリー・オン・ザ・ショートケーキ 16

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さすがにこの話になると、うちの両親は黙り込んでしまった。

そりゃそうだよね。

てっきり東京で就職すると思ってたのに、いきなりシンガポールとか。

「…それって、いつまで？
ずっとシンガポールってこと？」

神妙な面持ちでお義父さんが言うもんだから、裕太くんは慌てて訂正する。

「いや…、ずっとってわけじゃなくて。
シンガポールで請け負ってる仕事が終わったら、帰国する予定なんですけど。」

改まって敬語で話す裕太くんにつられて、

「それって何年くらい···ですか？
もしかして、ずっとってことですか？」

お義父さんも敬語になってしまう。

「まだ未定ではあるんですけど、２年か３年くらいにはなるかと思います。」

いつもなら居心地のいい部屋の中に、妙な緊張感が漂いはじめる。

本当なら今頃、２人でお酒とか飲んじゃって、いい感じになってる時間帯なのに。








「２、３年ならいいんじゃないの？」

そんな緊張感をぶち破ったのは、うちのお母さんの一言だった。

「新婚生活を海外っていうのも悪くないじゃん。
私達も遊びに行くし。」

さっきまで張り詰めていた空気は、そんなお母さんの呑気な発言で一気に緩んでしまった。

「緑ちゃんがそれでいいならいいけど。
俺はてっきり、Aちゃんが海外に行っちゃったら、緑ちゃんが寂しがると思ってたから。」

「平気だよ、今までだって離れて暮らしてたのに。
海外でもLINEやSkypeで無料で顔を見ながら会話ができるし。」

やっぱりね。

うちの母はそういうタイプだよね。

隣で正座している裕太くんも、明らかに安堵の表情になっちゃってるし。

どうやら一生に一度のはずの「両親への結婚の挨拶」という儀式も、無事に終了したみたいだ。

でもそれは、私の思い描いていたものとはかなり違ったけど。

でも、こういうのも悪くはないよね。









その夜、例の天蓋ベッドの中で、私達はずっと話をしていた。

「で、いつにする？」

唐突に、裕太くんはそんなことを言い出す。

「何が？」

「婚姻届。
いつ出す？」

…って、展開早くない？

確かにうちの両親という第一の難関は突破できたけど、まだまだしなくちゃいけないことがあるんじやなかった？

「裕太くんのご両親や、おじいちゃんおばあちゃんにも挨拶しないといけないんじゃない？」

「まあ、それは適当に。」

適当にって！

そこは大切だと思うんだけど！

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