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Aの言葉に、俺は空けられたAとの距離を詰めることすら忘れるくらい、フリーズしてしまう。

「意味もなく、健永くんの前をウロウロしてみたりもしたよ?
でも、健永くんは全然気付いてくれなくて。
隣には可愛い女の子がいたし。
もう、私のことは忘れちゃったんだろうなー、って思ってた。
だから、木下くんのこと、なんていうか…、嫌いになれない。」

ぎゅっと両手を握りしめて、俺とは目を合わせてくれないまま、話を続ける。

「後つけてくるだけで、何もして来ないから。
私だって、健永くんに何もしなかったでしょ?」

ようやくAは俺と目を合わせてくれたけど、恥ずかしいのかすぐに目を逸らす。

「木下くんは、私が健永くんと付き合ってることも知ってるし。
大丈夫…、だと思う。」

そう言ってもう一度、俺を窺うみたいにチラ見してくる。






なんだか…、言葉が出なかった。

Aが、俺のことを追っかけてこの大学に来たことも知ってたし、俺がなかなかAの存在に気付けなかったことも。

でもまさか、俺の後つけたりしてたなんて。

本当なら怖いとか、重い、とか思っちゃうのかもしれないけど。

そんなAのことが愛しいって、心から思う。

でも、それとストーカーの彼とのことは別だから。

「それでも俺はAのこと、ずっと守り続けると思うよ?
毎日送り迎えもするし、ずっと一緒に居続けると思う。
それでもいい?」

Aの目をしっかり見てから、そう言ってあげると、Aはようやく小さく頷いてくれる。

「それから、約束して。
絶対、一人にならないってこと。」

「…うん。」








Aに開けられた距離を詰めるみたいにして、ラグの上、Aの隣に座り直す。

「A、よく聞いて。
Aと俺はもう、運命共同体みたいなもんなんだと思う。
Aが悲しいと俺も悲しいし、俺が寂しい時はAも寂しい。
違う?」

「違わない。」

Aはポツリと呟くと、俺の肩に頭を預ける。

「俺から絶対離れないで。」

Aは返事の代わりに、俺の指に自分の指を絡めてきた。

「…今日の健永くん、ちょっとカッコいいね。」

「何それ。いつもカッコよくない?」

「カッコいいけど、口うるさいもん。
すぐ怒るし。
心配性だし。
ニカ先輩達にもあんなに過保護にしたら、嫌われるよ?」

とか、生意気なことを言ってくる。

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ゆいゆい(プロフ) - 俊くんのに続きコメント失礼します。実は私、宮千好きなので、このお話もとても大好きです!!健永くんと主人公ちゃんの今後も気になりますが、二人の過去の事も、もっと見てみたいなぁと思いました!生意気言ってすいません。わかめさんの作品大好きです! (2017年9月7日 1時) (レス) id: 1462413259 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:わかめ | 作成日時:2016年5月22日 2時

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