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不動産屋さんと別れて、駅の近くのファミレスに入ったところで、

「昨日から、健永くんは意地悪だね。」

って、Aに不貞腐れた声で言われてしまった。

「うん。
俺、実は意地悪だったみたい。」

そう言って笑いかければ、Aはムクれた顔のまま、目をそらしてくる。

「でも、ちゃんとわかってるから。
健永くんが私に現実を教えようとして、こういうことしてるんだってことは。」

…なんだ、わかってたんじゃん。









「駆け落ちはやめる。」

キリッとした目をして俺を見てきたかと思えば、またすぐに目をそらされた。

「ちゃんと大学は卒業する。
卒業して就職して、お金を貯めてから…。」

「貯めてから?」

「貯めてから駆け落ちする!」

そう来たか。

そんなAの答えが面白くて、思わず吹き出してしまった俺を見て、Aも少しだけ笑ってくれた。

だけど目が合うと、すぐにそらしてくるけど。

どうやらAの中では、駆け落ちは必須らしい。

「いいよ。
じゃあ、今から予行演習する?
駆け落ちの。」

そう言ってやれば、Aの表情はまるで陽が差したように明るくなる。

「ほんとに?」

って、テーブルに身を乗り出して。

Aのこういう単純さに、俺は救われてるんだけど。









「ただし、明日の夕方まで。
明日の夜はバイトが入ってるから。」

「そんなの休めばいいじゃん。」

とか言いながらも、もうAは機嫌を取り戻して、スマホで駆け落ち先を探してる。

「海の近くとかいいんじゃないかな?
険しい崖とかありそうな。」

「何それ。
2時間ドラマの見過ぎじゃない?」

「だって逃げてきた感って必要じゃん。」

Aがあんまり楽しそうだから、俺もはしゃいで2時間サスペンスに出てきそうな崖のある街を探したりして。

あーあ、結局俺はAに振り回されっぱなしだわ。

せっかくAに厳しい現実を教えてやろうと思ったのに、それすらもう楽しみにすり替えちゃってるし。









電車を乗り継いで、海の近くの鄙びた街まで。

そこはちょっと廃れかけの温泉街で、駆け落ちするにはもってこいのモノクロさ加減。

駅前の案内板を見れば、駅から少し歩けば大きな温泉旅館があるみたい。

駅の近くには、なんか幽霊でも出そうな寂れた旅館があるだけ。

俺的には大きな旅館に行きたいのに、

「駆け落ちなら絶対ここ!」

ってAが譲らないから、仕方なくその寂れた旅館に足を踏み入れてみることにした。

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ゆいゆい(プロフ) - 俊くんのに続きコメント失礼します。実は私、宮千好きなので、このお話もとても大好きです!!健永くんと主人公ちゃんの今後も気になりますが、二人の過去の事も、もっと見てみたいなぁと思いました!生意気言ってすいません。わかめさんの作品大好きです! (2017年9月7日 1時) (レス) id: 1462413259 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:わかめ | 作成日時:2016年5月22日 2時

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