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部屋に連れて帰って、Aをソファーに座らせて、大好きなミルクティーを淹れてあげて。

Aから話してくれるのをずっと待ってるのに。

Aはずっと黙ったまま。

「さっきの人に何かされてるの?」

「されてない。」

俺の言葉に被せるみたいに答えてくるし。

だから俺は、Aの瞳を覗き込む。

でもAはそんな俺の目を、真っ直ぐ見返してくる。






「悪い人じゃないんだよ。
木下くんは。」

木下くんっていうんだ、あの彼。

「ただ、ちょっと弱いだけ。」

「何が?」

「心が。」

「どういう意味?」





Aの話によると、木下くんは同じ学科の子で、普通に仲が良くて。

今年になってからつきまとわれるようになったって話を、Aはぽつぽつと話してくれた。

「でも、悪い人じゃないんだよ。」

「…わかってるって。」

Aの口から、俺以外の男の話が出て、しかもそいつをかばってるっていう光景は、

なんか妬けるけど、そんなAが健気で可愛くて。

だからつい、手を伸ばしてAを抱き寄せてしまう。

背中をポンポンと撫でながら、

「Aはいい子だね。」

って、誉めてんのに、Aはご機嫌斜め。





「何で健永くん怒んないの?
私、ずっとこのこと、健永くんに黙ってたんだよ?」

「うん、怒らなきゃいけないことなんだけど。
なんか、Aが可愛いなー、って思ったから。」

「どこが?
私って嫌な子じゃん。
彼氏に隠し事してたのに。」

「なんか理由があったんじゃないの?
俺に言いたくない理由。」

そう言ったら、Aはしばらく静かになるから、やっぱり図星?





「なんかね…、昔の私に似てるんだ、木下くんって。
依存してるんだよ、私に。」

「Aは誰に依存してた?」

「健永くんに決まってんじゃん。
中学の頃から、私はずっと健永くんが好きだったし、付き合うようになってからも健永くんにずっと依存してた。」

「そうだっけ?」

正直俺は、Aに依存されてたような記憶はあんまりないんだけど。

どちらかと言えば、俺の方がAに依存してたかも。

何するのも、Aと一緒にやりたがったし、俺の生活や行動、全てにAを繋げてたような気がする。

「私はずっと、全部が健永くんだったもん。
健永くんと同じ部活に入りたかったし、同じ進路にしたかったし。
健永くんが留年して、同じ学年になってくれないかなー、とまで思ってたよ。」

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ゆいゆい(プロフ) - 俊くんのに続きコメント失礼します。実は私、宮千好きなので、このお話もとても大好きです!!健永くんと主人公ちゃんの今後も気になりますが、二人の過去の事も、もっと見てみたいなぁと思いました!生意気言ってすいません。わかめさんの作品大好きです! (2017年9月7日 1時) (レス) id: 1462413259 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:わかめ | 作成日時:2016年5月22日 2時

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