GOLD -YELLOW-

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私が仕事してる間もメールやLINEで、

「本買ってきて」

「サンドイッチが食べたい。」

とか、指示が入る。

でも、その本もサンドイッチも、その辺に売ってるものじゃなくて、

並んで買いに行ったり、取り寄せてもらったりと、大変なものばっかり。

一体、玉森くんって、どんな生活送ってんの？

私生活、全く以って謎なんだけど！









退院の日も、朝からお出迎え。

大量の荷物を持たされ、玉森くんは松葉杖で優雅にご退院。

入院中、玉森くんは、看護師さんや患者さんから「玉森王子」って呼ばれてたらしい。

退院するだけで、見送りがすごいし！

私に見せる意地悪い顔とは全く違う、天使みたいな笑顔を見せて病院を後にする。

入院中の一週間、思ってたんだけど。

今まで会社で見てた玉森くんと、入院中の私の前だけで見せる玉森くんは全然違う。

会社ではふわふわ曖昧に笑って、たまにどぎついことも言うけど、言い方が柔らかいから誰も気にしないし。

容貌がアレだから、みんなその柔らかい雰囲気に惑わされてるんだと思う。

もちろん、私もその一人だった。

でも同期だし、課も一緒だし、いつも近くにいるから、

最近は薄々、その本性に気付いてたけど。









…本当の玉森くんは、ちっとも天使なんかじゃない。

毒舌はすごいし、私に天使みたいな微笑みなんて、一切与えてくれないし。

常に命令口調だし。

私が加害者だから、言い返せないのがわかってて言いたい放題だし、やりたい放題。

…正直、私にはサタンだよ。

最近、玉森くんに何か話しかけられそうになると、ビクッて体が反応するくらい。

今度は、どんな無理難題を言われるんだろう、とか思ったら身も竦むって。









今だって、よそ行きのスマイルで見送りの看護師さん達に頭を下げると、タクシーに乗り込んで、

タクシーが病院を出たところで、一言。

「…あー、疲れた。」

って玉森くんは、シートにぐったりともたれかかる。

「Aん家って、どこだっけ？」

「南森町だけど。」

「番地は？」

って、詳しく言わされた後に、運転手さんに、

「じゃ、そこに向かってください。」

とか言ってるから。

「先に送ってくれるの？」

なんて聞き返した私に、玉森くんはまた、意地悪な視線を寄越す。

「治るまでお前ん家に住むから。
俺１人で生活するなんて、とても無理だし。」

「えーーー！？
無理だよ、無理。
ワンルームだし、狭いし。」

そう言っても、玉森くんは知らん顔。

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