原色Ｂ型男子図鑑

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「えー…。」

嫌そうな顔をしてチラリとこちらを窺ってから、諦めたのか渋々書き始めた。

二階堂くんが書いてる様子を隣から覗き込んでみる。

だいぶ悩んで書き始めた回答は、ＹＥＳでもＮＯでもなく、「どちらでもない」だった。

その理由についても、二階堂くんは難しい顔をして悩んでる。

「そんなに悩む？」

「だって経験ないし。
そもそもネットほとんどしないし、ＳＮＳも使ってないから。」

ペンを握りしめたままずっと悩んでる二階堂くんを見てたら、その指に目が止まってしまった。

「二階堂くんって…、指、綺麗じゃない？」

初めて見た、こんなに綺麗な指。

細くて長くて、男の人の手にしては美しい指。

「…は？
そんなこと言われたの初めてだけど。」

って、二階堂くんはちょっと嫌そうな顔をした後、そのまま勢いに任せて一気に書き上げた。

『経験がないのでわからない』









「何それ。
そんなの答えになってないじゃん。」

そう文句を言えば、

「仕方ねーじゃん。
ほんと、経験ないんだし。」

って、無愛想な返事が戻ってくる。

「Aは？
何て答えた？」

「私？
もちろんＹＥＳだよ。」

「何で？」

「私は内面重視だから、外見がどうだろうが関係ないし。」

そう言った途端に、鼻で笑われてしまった。

「ＳＮＳで内面とかわかる？
A、本気でそんなこと言ってたら痛い目に遭うよ？」

…玉森くんといい二階堂くんといい、どうしてこう上から目線なのかな。









だけど今日の私は機嫌がいい。

何故なら…、４時限目は佐藤先生の哲学の授業だから。

別に佐藤先生のことが好きってわけじゃないけど、付き合うなら絶対こんな人がいいって思う。

哲学が本当に好きなんだなって感じで、哲学の話をしてる時は少年みたいに熱くなっちゃうし、

かと思えばけっこうドライで、質問しても「自分で考えてみ？」って優しく突き放す。

でも本当に困ってたら、さりげなく助けてくれるような人なんだ、佐藤先生は。

だから３時限目が終わったら、二階堂くんに挨拶もしないでそのまま教室移動。

いつもならのんびりエレベーターとか使ったりするんだけど、この授業だけは階段ダッシュ。

だって、いい席で佐藤先生の授業を受けたいから。









今日の私の席は右側の３人掛けの中央寄りの席。

しかも前から３列目。

１、２列目は座る人がいないせいで、実質１列目で先生のことを見ていられるから。

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