原色Ｂ型男子図鑑

9 ページ9

残りの30分、二階堂くんは再び寝ちゃうのかと思ってたら、自分のルーズリーフに汚い字で黒板の字を写し始めた。

あんまり私がじっと見てるから、

「…何？」

って小声で聞いてくる。

「意外と真面目なんだね。」

その言葉に二階堂くんは何故か動揺して、

「…は？」

とか言いながら、またルーズリーフに向かう。









「…落とすわけにはいかないから、単位。」

ボソッと呟いた後、照れ隠しなのか人懐っこい笑顔を見せてきた二階堂くんに、

不意打ちでキュンときた。

…ちょっと待って。

何、このギャップ。

授業とか超適当なんだと思ってた。

だってさっきも、いきなり寝ちゃうし。

なのに、こうやって一生懸命ノートを取ってる姿を見てたら…。

その横顔が急に、カッコよく見えてきちゃう。









「もしかして、今日寝てないの？」

小声で聞いてみたら、

「寝てない。
12時まで店で後片付けしてた。」

って、そっけない返事が返ってくる。

「何のバイトなの？」

そう聞いたら、二階堂くんが急に顔を上げてじーっと見つめてくるから、

…この間玉森くんに忠告されたことを、急に思い出してしまった。

「ごめん、さっきの忘れて。」

そうだった！

人のプライベートに深く突っ込んではいけないんだった。

「…居酒屋。
朝の6時まで営業してるから。
いつもなら少しだけ寝て学校に来るんだけど、今日はそのまま来たから。」

ボソボソと低い声で、それでもきちんと教えてくれた。

「ごめんね、変なこと聞いて。」

「何で？」

「玉森くんに、他人のプライベートに深く突っ込むなって言われてたから。」

「…別に。
聞かれて恥ずかしいことしてるわけじゃないし。」

二階堂くんは基本、愛想がない。

かと思えば、無邪気な笑顔を時々こちらに向けてきたりする。

ヤバイな…。

こういうギャップに弱いんだって、私。









「アンケート何人集まった？」

そう聞かれて、

「全部で200人分くらい？」

正直にそう答えたら、思いっきり眉間に皺を寄せられる。

「ヤバくない？
まだ半分もいってないじゃん。
間に合うの？」

何？その偉そうな言い方！

何で私に言うかな？

共同作業じゃん。

大体、二階堂くんはまだ一人分も集めてないよね。

ムカついた私は、鞄の中からアンケート用紙を1枚取り出して、二階堂くんの前に置いた。

「書いて。
ここで今すぐ。」

腹いせに二階堂くんの恋愛観、しっかり見届けてやろうじゃないの。

10→←8

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す