原色Ｂ型男子図鑑

8 ページ8

「じゃあ、玉森くんだって私にありがとうしてよ。
私１人にアンケート押し付けてたくせに、今日まで。」

ドSにはドS返し！

だけど、

「今日頑張ったし、俺。」

とかって、なかなか「ありがとう」は言わない玉森くん。

そういうのも想定内だし。

「じゃあ、チャラってことで。」

そう言ってやれば、玉森くんは吹き出すように笑い出す。

「Aって面白い。
俺の周りにはいないタイプだわ。」

「…は？」

「でも、いつかAに「ありがとう」って言わせてみようかな。
なんか面白そう。」

そんなに私を屈服させたい？

残念でした。

私はドMでもないし、そもそもB型男子には興味がないから。








午後からの授業を受けるために、大学へ向かってる途中、

「玉森さんですよね。
握手してもらってもいいですか？」

とか、女の子に声をかけられてるのを見て驚いた。

いつもこんな感じなんだ、外では。

大学の近くに来ると、玉森くん待ちをしてた女の子に手紙とか渡されてるし。

「まるでアイドルだね。」

なのに玉森くんは浮かない顔。

「常に見られてる気がして、気が抜けないんだよね。」

なんか…、大変そう。

そういう仕事をしてると、普通の大学生でいさせてもらえないんだね。









３時限目の教室に時間ギリギリで入ったら、もう席はほぼ埋まっており、

私に気づいた二階堂くんが、手招きをする。

「ここ、空いてるよ。」

って、けっこうなでかい声で。

席についた途端に、両手を合わせてまるで拝むみたいに謝罪された。

「今日はごめん！
どうしてもバイトが抜けられなくて。」

「朝からバイト？」

「正式には昨日の深夜からバイト。
いつもは6時くらいには帰してもらえるんだけど、今日はお客さんが帰ってくれなくて。
玉、来てくれた？」

「来てくれたよ。」

「じゃあ、よかった。」

って、いきなり自己完結したかと思うと、

「ごめん、出席カード回ってきたら起こして。」

って、そのまま机に突っ伏して寝てしまった。

マジか！

いきなり寝ちゃうわけ？

今、授業が始まったとこなのに。









授業が始まって１時間ほど経った頃、ようやく出席カードが回ってきた。

二階堂くんを揺り起こすと、人でも殺しちゃいそうなくらい不機嫌な顔をして、目を覚ます。

出席カードに名前を書くと、

「Aのノート見せて。」

ってそのまま私のルーズリーフを奪い取ると、自分のルーズリーフに写していく。

9→←7

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す