TURQUOISE -BLUE-

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「いいのに、お金とか。」

「だって、Aちゃん、お金ないじゃん。」

…って、健永くんは鋭いよね。

お金がないわけじゃないよ。

健永くんには、そう見えるかもしれないけど。

食べることにあまり興味がないから、健永くんに注意されなければ食べることも忘れてたりするし。

「Aちゃんは、本にお金を遣いすぎなんだって。」

健永くんは私の部屋の本棚を見回して、苦笑いする。

「いつか、地震でも来たら、俺らこの本棚と本に押し潰されちゃうからね。」







いつも健永くんはそう言うよね？

確かに部屋をぐるりと取り囲むように本棚に囲まれたこの部屋に、初めて健永くんが来た時、

「すげー！」

って、ひたすら驚いてたよね。

「とにかく、受け取ってよ。」

そう言って、封筒を押しつけて来ようとするのを、両手を後ろに隠して拒否する。

「いらないよ。
私だってさんざん、健永くんのお世話になってるのに。」

「うん、お世話してるよ？
でもそれは、Aちゃんが頼りないからじゃん。
俺がいないと、本ばっか読んでて、ご飯も食べないし、瞬きとか忘れてる時もあるからね。」

こんなしっかりしてるくせに、健永くんは私より５歳も年下。







「じゃあ、ここに入れとくから。」

そう言って健永くんは、サイドボードの引き出しの中に封筒を入れてしまう。

そこに私が大事なものを入れてるっていうのは、健永くんもよく知ってるから。

現金だって入れてるし、通帳だって入ってる。

だけど健永くんは、わかっててもその引き出しの中の物に手を付けるようなことはしない。

本当に不思議な子なんだ、健永くんって。

お母さんみたいに口うるさいかと思えば、ちょっと抜けてて天然な部分もあるし。








でも、私は健永くんのことを、何も知らない。

今健永くんは大学４年生ってことと、実家は遠いってことと。

友達に追い出されてここに来たってことくらい。

何が理由で追い出されたのかも知らないし、

聞いたこともない。

たまにふらっと、何日かいなくなることがあるけど、ちゃんと予告してから行ってくれるから、心配をすることもない。

でも、どこへ行ってるのかも知らない。

４年生で大学の授業はほとんどないって言ってたし、就活もあるはずなのに、スーツとか着てる姿も見たことがないし。

昼間どうしてるのか、この部屋にいるのか、どこかへ出掛けてるのかも、まるでわかんない。

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