頑なモンブラン

9 ページ9

「…ごめんね。」

って、謝って、また歩き出す。

「…こっちこそ、ごめん。」

いきなり謝られるから、びっくりして二階堂くんを見る。

「なんで二階堂くんが謝るの？」

「なんか…、いろいろごめん。」

「じゃあ、私もごめん。」

「Aは悪くないよ…。」

…二階堂くん、初めて名前で呼んでくれた？

あ、助けに来てくれた時も、呼んでくれたね。

いつも、お前呼びされてるから、私の名前も知らないんだと思ってた。




「いろいろごめん。
何も食べてないの知ってたのに、食べさせてあげられなくて、ごめん。
追いかけて、こかしちゃって、ごめん。
さっき、怒って、ごめん。」

って、二階堂くんは、いっぱい、ごめんをくれる。

「それから…、朝、泣かせてごめん。」

「朝？」

「泣いてたじゃん、朝。
千賀が迎えに来る前。」

やっぱり、気付いてたんだ…。

超恥ずかしいじゃん。

「何で泣いてたの？」

「…泣いてないよ。」

「泣いてたじゃん。」






「俺が、冷たかったから？」

わかってんじゃん…。

って、言おうと思ったけど、黙ってた。

「なんで何も言わないの？」

って、顔を覗きこまれるけど、

今、顔真っ赤だから、見られたくなくて、顔をそむける。

なのに、

「顔、真っ赤じゃん。」

って、そんなこと言う？





「冷たくして、ごめんね？」

って、優しい声で謝られて、ようやく二階堂くんと目を合わせることができた。

声と同じくらい、二階堂くんは優しい目をして、私を見てた。

「別に、Aのことが嫌いなんかじゃないよ。
なんか…、不器用なだけ。」

「…意味わかんないよ、それ。」

「なんか…Aの前に出ると、うまく話せなくなるから、
あんな態度とっちゃって。
Aが後ろで泣いてるのに気づいたんだけど、何もできなくて。
最悪だわ、俺。」

って、なんか自分で言って自分で凹んでる。




「ありがとう。
二階堂くんが助けに来てくれなかったら、私もう、死んでたかも。
だから、もう謝らなくていいよ。」

って、背伸びして、二階堂くんの頭をポンポンした。

さっきのお返し。

「じゃあ、サークル辞めない？」

「それは辞める。」

「即答じゃん。」

って、二階堂くんが笑う。

「いてよ、サークル。
俺、Aがいるからこのサークル入ったのに…。」

「…なんで？」

って、二階堂くんを見ると、二階堂くんの顔も真っ赤になってて。

「二階堂くん、顔真っ赤だよ？」

って、さっきのお返し。

10→←8

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す