頑なモンブラン

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辺りはそろそろ、薄暗くなってきて。

「早く、山下りないとね。」

って、立ち上がる。

「足、大丈夫？」

「うん！」

って、空元気な返事をして、また歩き出す。

さっきまで時速0.5kmくらいだったけど、二階堂くんがいると、時速2kmくらいで歩けるよ。

普通の人は時速4kmらしいから、だいぶ遅いんだけど。

二階堂くんは私のペースに合わせて、ゆっくり歩いてくれる。




「さっき、サークルのみんなの車、通りすぎてっちゃった。
お前が泣いてる時。」

二階堂くんは、子供みたいな笑顔で私に笑いかけてくれる。

「だから、もう歩いて帰るしかないよ。」

って、頭ポンポン。

そんな二階堂くんの行動が不思議で、歩きながらじーっと、二階堂くんの顔を見る。

「二階堂くん、変。」

って言うと、

「何が？」

って、びっくりしてる。




「変だよ。
今日の二階堂くん、変。」

「は？何が？」

「わかんないこといっぱいあるんだけど。」

「だから何？」

「まず、最初ね。
なんで私が逃げ出したの、気づいた？」

なのに、ずっと黙ってる二階堂くん。

だから、肘で二階堂くんを突いてみる。

「そりゃ…、気づくわ。」

「だって、私あの時、誰にも見られないように、ちゃんとチェックして脇道に入ったんだよ。」

「…知ってる。」

「だから、なんでわかったの？」

二階堂くんが、立ち止まる。





「…見てたからじゃん、ずっと。
お前がずっと雑用やらされてて、何も食えてないの知ってたよ。
だから、お前用に肉とか、よけてた。
後で食わせてやろうと思って。
でも、お前、いきなり逃げるように帰っちゃうから…。」

だんだん、薄暗くなってきて、二階堂くんの表情も見えにくくなってきた。

「追いかけたら逃げるし。
走ってこけるし。
帰ろうって言ってんのに、言うこと聞かねーし。
変なのはお前の方だろ？」

どんな顔してんだろ、って思って、二階堂くんの顔を下から覗きこむと、

「見んなって！」

って、顔をそらされる。







「さっきのだって。
あの時、俺がいなかったら、お前どうなってたよ？
連れていかれて、殺されて、山の中にポイ、だって。」

「そうだね…。
ありがとう。
…って、あの時、どこにいたの？」

「あの時は、お前気づいてなかったけど、途中からお前の後ろにいたよ。
さっきお前がしたみたいに、隠れてお前が通り過ぎるの待ってたのに、気付かないし！
そしたら、変な男に拉致られそうになってるし！」

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