頑なモンブラン

42 ページ42

「ここ、プールがあるんだって。
下にプライベートビーチもあるし。
２泊するから、両方で遊ぼう。」

「…水着、トランクの中だよ。」

「持ってきてるよ。
Aのトランクの中から朝、抜いといた。」

「二階堂くんの水着は？」

「もう着てる。」

って、ハーフパンツのウェストをめくって、見せてくれるから。

なんか、すごいんだけど、二階堂くんって。

思ってたより全然、頼りがいがあるっていうか。

私より全然しっかりしてる。






その日は夕方まで、プールでたくさん泳いだ。

シーズン過ぎてるから、お客さんは少ないし。

プールは２つあって、ちょっと深いプールと、浅めのプール。

プールも夕方まで貸し切り状態で、まるで小学生のように２人で泳いだ。

プールの中には、ＢＡＲがあって、水着のままプールの中にある椅子に座って、お酒まで飲めるようになっている。

私達はまだ、未成年だから飲めないけど。

「来年もここに来たいね。」

って言ったら、

「俺、その時もう二十歳だから、ここでお酒飲めるかも。」

なんて笑ってる。

「Aはいつだっけ？誕生日。」

「来月だよ。」

「俺、先月だった。」

…知ってるよ。

まだその頃は、付き合ってもなかったし、ツンツンされてた頃だから、

祝ってもあげられなかったし、プレゼントを用意することもできなかったけど。

「じゃあ、来年、ここで誕生日しよ。
私、バイトするね。
お金貯める。」

「うん、一緒に貯金しよっか。」

って、子どもみたいに笑って、プールの中、水をかけてくるから。

私もムキになって、水をかけ合う。






そのうち、夕暮れになると、プールの中のBARには大人なお客さんが何人かやってきて。

私達はちょっと、居づらくなって、もう一つの深いプールの方に移動する。

「浮き輪持って来ればよかったー。」

って言ったら、

「背中につかまって。」

って、おんぶしてくれて、そのまま泳ぐ。

なんか楽しい。

「…胸当たってるしー。」

って、二階堂くんは照れてるけど。

背中に掴まれって言ったの、二階堂くんじゃん。






泳ぎつかれて、プールの縁に２人で座る。

もう、辺りはすっかり暗くなっちゃって。

プールサイドをオレンジの照明が、照らしている。

誰もいないから、何度もキスして。

「もう部屋に戻る？」

って聞かれるけど、まだ戻りたくなくて、１人でプールに戻る。

43→←41

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す