続・金曜日のよるたま

涼しい夜のよるたま ページ4

あの後、玉はすぐに眠り込んでしまい、ベッドに残された私は、瞳孔を開かせたままずっと天井を眺めていた。

私を抱いてたはずの玉の腕はとっくに外されて、

気持ち良さげな寝息をたてて、あどけない寝顔を私に見せつけながら眠っていた。

…なんだ、この展開は。

こんなところで何してんだ？私は。

てか今…、何があった？

キスしたよね？私達。

なのに何で即寝しちゃってんの？

私は全然、眠れないんですけど！？






薄暗い部屋の中、私はずっと天井を眺めていた。

…ちょっと、冷静に整理してみよう。

何で玉は私にキスなんかしたんだろう。

まさか、私のこと好きだとか？

いやいやいや、いつものように私をからかって遊びたいだけだろう。

もしかして、あれはキスじゃなかったとかも考えられるよね？

ある意味、事故みたいな。

だってキスというより、唇が少しだけ触れたくらいの感覚だったし。

それか寝ぼけて、誰かと間違えてキスしちゃったとか。

そんなキスの理由を延々と考えてみるけど、全く結論の出ないまま、朝を迎えることになってしまった。







翌朝、玉はスマホのタイマーであっさり目を覚まし、あどけない目をして、

「おはよ」

気怠そうにそう朝の挨拶をしては、バスルームに消えてしまう。

何？そのいつもと変わらない感じは！？

私は昨晩のキスが衝撃的過ぎて、一睡もできなかったっていうのに！

とりあえず帰ろう。

ここにいたら悶々と考え過ぎて、私の頭はショートして煙でも出してしまうかも。

帰り支度をして鞄を掴んだところで、玉がバスルームから出てきた。

もうすっかり仕事モードの表情になって出てきた玉は、

「もう帰んの？」

とか、すました顔で聞いてくる。

「帰るよ
だって、玉も仕事じゃん」

なのに玉は大胆にも私の前に立ちはだかっては、頬に手を伸ばしてくる。

指で私の頬を一撫でしては、髪を耳にかけながら、

「まだ眠そうな顔してんじゃん
ここで寝てけば？」

とか言っては、満足げに目を細めていた。

…寝られるわけないじゃん！

今の私はすぐに自分の部屋のベッドに潜り込んで、死んだように眠り続けて、昨晩の記憶をかき消さなきゃいけないのに！

「今日は帰る」

私は玉の目をちゃんと見ることもできずに、逃げるように玄関に向かった。

玄関まで見送りに来てくれた玉は、

「A、昨日はありがとう
お陰で、なんか元気出たかも」

とか、らしくない素直なことを言って手を振ってくれた。

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