続・金曜日のよるたま

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「玉、寒くない？」

不意に訊ねてみた。

だってさっきから、玉の髪にはチラチラと雪が降ってはゆっくりと溶けていってるから。

そのうち、積もっちゃうんじゃないかな、という感じに。

「寒くない
Aから体温を奪ってるから」

くすくす笑いながら、玉は私の肩先に頭を乗せてくる。

やっぱり私は、まだ玉のこんな甘ったるさに慣れない。

いつも小生意気で偉そうで、上からオラオラしてくるような感じだったのに、急にこんな風に甘ったるい玉を目の当たりにすると、変に動揺して緊張してしまう。







だからその現実から目を逸らすように、空を見上げてみた。

ツリーの電飾に照らされて、ゆっくりと落ちてくる雪の様子があまりに幻想的で、

この状況も忘れて私は、ずっと落ちてくる雪を眺めていた。

「…何してんの？」

そんな私の様子に気付いて、玉も空を見上げる。

「なんか綺麗じゃない？」

そう話しかけても、玉から返事はない。

軽く口を開いて、落ちてくる雪を眺めている。

「口、開いてるよ
雪が入っちゃうよ」

その言葉で、ようやく玉は口を閉じた。

「なんかすごくない？
雪って、こんなゆっくり落ちてきたっけ
俺、こんなにちゃんと雪を見たの初めてかも」

私達は一体、何しちゃってんだろう。

廃ビルの屋上のクリスマスツリーの前で、膝の上に乗りながら空を仰いでるとか。








「あのさ、年内はもう会えないかもしれない」

玉はあっさりとそんな言葉を口にした。

「そんなに仕事が忙しいの？」

「まあ…、そんな感じ？」

他人事みたいな言い方だな。

そんなに私に弱みを見せたくない？

「玉、寒いんじゃない？」

もう一度聞いたら、玉は目を丸くして私を見上げる。

「寒くないけど」

「最近、ちゃんと寝てる？」

「普通に」

玉の耳たぶを指でつまんで、

「ほら、耳たぶ冷たいじゃん」

その柔らかさを味わうように、揉んでみたり、引っ張ってみたり。

玉はくすぐったがるけど、嫌がる素振りは見せない。









玉の膝から降りて、クリスマスツリーの前に移動して、

「クリスマスツリーの前で写真撮ろう」

そんな提案をしたら、玉は苦笑いで隣に立つ。

私からスマホを奪い取ると、腕を伸ばして何枚かツーショットを撮ったあと、

一番最後の写真で、玉は不意打ちで私の頬にキスしてきた。

その瞬間、私は思い出してたんだ。

昔、玉が出てた映画で、こんなシーンがなかったっけ。

それは頬ではなく、唇へのキスだったけど。

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