続・金曜日のよるたま

二十六夜のよるたま ページ26

もう一ヵ月近く、玉には会えていない。

去年の秋頃もドラマで忙しくて、玉はオンラインに現れることも少なくなったけど。

仕事の愚痴や忙しさについては一切私には言わなかった。

今も去年の今頃と同じくらいの忙しさなんだろうけど、

一日数回のLINEのやりとりと電話で、玉はそんな素振りは全く見せてこない。

「何してんの？」

って緩い感じで、今夜も日付が変わった頃に玉から電話がかかってきた。

あ、これは家に帰ってきてる感じかな。

だって声がだいぶ柔らかいから。







「何もしてないよ」

「嘘つき、ゲームとかしてんじゃないの？」

「してないよ、今日は」

本当にしてないんだ。

今日はたまたま仕事中にダラダラと流してたテレビで、不意に玉のＣМを見てしまって、そのままフリーズするように画面に見入ってしまったことで、

なんか一日、私はおかしかった。

ＣМはすぐに終わってしまったのに、私はずっと放心したように画面を見つめていた。

今のは…、本当に私の彼氏？

私はあの人と付き合ってるんだっけ？

私には見せないような目をして、画面の向こうで微笑んでいた玉は、果たして私の知ってる玉なんだろうか。

そんなことを考えてたら、仕事も全然進まなかった。








「玉は？今日も忙しかった？」

「んー…、普通」

玉の言う普通はよくわからない。

だけど玉は辛さや頑張ってるところなんかを、人に見せたがらない。

だから私も、気付かないふりをしておいてあげるね。

僅かな沈黙のあと、

「なんか俺ら、全然会えてなくない？」

玉は息を吐くかのような自然さで、そんなことを言う。

「なんかもう、Aの顔忘れそう」

とか、電話の向こうでくすくすと笑うけど、その言い方に微妙に切ない感じが混ざってるから、

きっと玉は、本気で寂しがってるんだろうな。

「この間テレビ電話したじゃん」

「寝る前に、たまにAのことを考えたりするけど、Aの顔がぼんやりとしか思い出せなくて、なんか微妙に脳が美化して補正してんだよね」

ほらまた、勝手にくすくす笑わないでよ。

玉の笑い声を聞いているだけで、今すぐ会いたくなる。









「なんか、いろいろ忘れそう
Aの周りの空気の感じとか、肌の感触とか、そういうの」

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