続・金曜日のよるたま

曖昧なよるたま ページ18

「殺すって何！？」

驚いてる私をよそに、玉はゆっくりとその綺麗な瞼を見せつけるように閉じてみせた。

「Aは殺さないよ
まあ…、精神的に殺しちゃうかもしれないけど」

まるで死ぬ間際の一言のようにそう言い残して、玉はそのまま静かになってしまった。

しばらくして可愛らしい寝息が聞こえてきたから、私は脱力するようにベッドを背にして深くもたれかかる。

玉って、こんな感じだったっけ？

普段は何にも執着してないような雰囲気を醸し出してるくせに、実は内面は鉛のように重いとか。

本当に玉は、奥深いというか、よくわからないというか…。

その日の玉はずっと私のベッドを独り占めして寝てたけど、朝５時にスマホのタイマーで起き出して、

「A、ずっとゲームしてたわけ？」

史上最悪に怖い顔をして、そう訊ねてきた。

「…してた」

「何で？」

「玉が寝てたし」

「隣で寝ればいいじゃん」

よく言うよ。

ベッドの真ん中で寝てたくせに。

身支度を整えた玉は、

「行ってくる」

とか偉そうに玄関先で言ったくせに、見送りに出た私の首を引き寄せるようにして素早く口付けてきては、満足げに口元に笑みを浮かべて、出て行ってしまった。








結局、金曜日の合コンに行くことはなく。

でも千歩はその合コンで気になる人を見つけたらしい。

翌日に千歩から電話で延々と報告を受けたから。

だから今日、玉にその話を教えてあげてるのに、なんだか生返事で興味なさげ。

テレビをぼんやり見ながら、ベッドの真ん中で退屈そうにあくびをひとつ。

「聞いてる？」

「聞いてるけど、興味がないだけ」

「そんなに興味ないかな…」

「あるわけないじゃん、他人の恋愛の話なんか
自分のことで精一杯なのに」

そう言い残すと、また玉はベッドに横になってしまう。









「最近の玉、部屋に来ても寝てばっかだね」

純粋にそう訊ねただけなのに、玉は恨みがましい目をしてこちらを見てくる。

「ゲームしないの？」

だって金曜日の夜なのに。

いつもは２人でゲームして遊んでたじゃん。

なのに最近はゲームもしないで、こんな風にダラダラしてるだけ。

「ゲーム、したくない？」

「したくない、今は」

「じゃあ、何がしたい？」

「何も」

そう言って、今度は瞼まで閉じてしまった。

一体、玉は何がしたいんだろう。

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