続・金曜日のよるたま

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なのに私は一時間後、玉の部屋にいた。

あの後、玉はたった一言で私を呼び寄せた。

「Aの欲しがってたソフト、手に入ったんだけど」

その一言で、私はすぐさま部屋を出てタクシーに乗り込んだわけで。

だってそのソフトは日本未発売で、北米で発売してるものを取り寄せるって話だったから。

「今日はそっちに持って行く元気がないから、Aが取りに来てよ」

そう言われたらもう…、行くしかないわけで。








玄関で出迎えてくれた玉は、勝ち誇ったような笑みを隠しもせずに、

「おつかれー」

そう言っては、私を緩くハグしてきた。

「ゲームは？」

「いきなりそれ？」

「当たり前じゃん、それを受け取りに来たのに」

短いハグを終えてリビングへ。

例のソフトはテーブルの上に、封筒に入ったまま置かれてあった。

勝手に封筒を開けて、２つあったソフトの１つを取り出しては胸に抱きしめる。

日本でこのソフトが売り出されるのは来年の冬なのに、もう手に入れることができたなんて！

ずっと私は、このゲームを心待ちにしてきたから。







「じゃあ帰るね」

そう言い残して玄関に向かおうとしたら、

「もう？」

不満げな玉の声。

「だって、すぐやっちゃうでしょ？このゲーム」

「ここでやればよくない？」

「それだと通信できないよ」

「今日は俺はやらないでおく
Aがやってんのをここで見てるわ」

何？このしおらしい態度は。

ソファーに座ってる玉の隣に座り直して、じっとその顔を凝視してみた。

案の定、その視線に玉が耐えられなくなって、

「…何？」

って口を開くまで。








「玉はそんなに私にここにいてほしい？」

その言葉に、一瞬だけ玉の黒目が揺れたのを見逃さなかった。

なのにすました顔をして、すぐに切り返してくる。

「好きな子には傍にいてほしいもんなんじゃないの？」

「でも、今夜は泊まらないよ」

その言葉に、しばらく睨み合うように見つめ合ったあと、玉は諦めたようにソファーに深くもたれかかった。

「そんなに警戒しなくてもよくない？」

ため息混じりに不貞腐れたような声で、

「金曜日くらい一緒に過ごしたいじゃん
Aの一番好きな曜日なのに」

そう言っては、寂しげに目を伏せる。

私は…、そういう玉にかなり弱い。

そんな私の感情を即座に読み取ったのか、玉はすぐに再起動して私に告げた。

「まあ、簡単には帰さないけどね」

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