金曜日のよるたま

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玉は意外と押しに弱い。

強気で攻めると、意外に言うことを聞いてくれる。

渋々ながらもSwitchを取りだした玉は、起動を始めるから、

私は強引に、PS4の電源を落とした。

「えー？そっち切っちゃうの？」

「だって集中できないから」

「いやいや、このゲーム、集中してやるやつじゃないし」

って、鼻で笑われても平気。

本当ならね、島の入り口だけ開いて、自分はPS4をやっててもいいわけよ。

でも、玉はそれをしない。

律儀にちゃんと付き合ってくれるのを、私は知ってるから。









無事に玉の島に到着して、まずは島内探検。

自由に歩き回っていたら、何故か玉はスコップを持って後からついてくる。

「ついてこないでよ」

「ちゃんと見張ってないと、Aが何しでかすかわかんないじゃん」

って、酷くない？

とりあえず一周してから、家の中を案内してもらってたら、

「今日、篠田からLINE来た」

玉はいつものように、視線をSwitchに向けたままそんな話をしてくる。

篠田というのは私達の同級生の男子で、玉とはけっこう仲が良かったんじゃないかな。

「彼女がキスマイのコンサートに行きたいって言ってるから、チケットなんとかならない？って」

「東京の？」

「いや、大阪
今あいつ、大阪にいるんだって」

「ふーん」

お互い画面に視線を残したまま、こんな会話を繰り返している金曜日の夜。








「Aは？
チケットいらないの？
くれとか言われたことないんだけど」

「だって玉、嫌がるじゃん」

「行きたいんなら、用意するけど？」

ようやく画面から顔を上げたら、玉も同じようにこちらを見ていた。

「誰が好きなんだっけ？キスマイの中で」

出たよ。

たまに、彼はこんなに聞き方をしてくる。

私に「玉だよ♪」とでも言って欲しいのかな。









「北山くんかな」

「ふーん」

玉は無表情で、視線を画面に戻す。

本当にめんどくさい男だ。

「嘘、本当はね、宮田くんが好き」

そう言ったら玉は、再び顔を上げてきた。

「だって優しいし、一緒にいたら楽しそうだから」

「でも宮田は絶対、Aのことは好みじゃないと思うけどね」

ほんと、ムカつく。

じゃあ聞くなよ。

だけど玉はそんなことを言いながらも、こっそり目の前に私の好きなプリンを静かにスライドさせてくる。

優しいんだか優しくないんだか、よくわからない。

私の知ってる玉森裕太とは、そんな人だ。

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