金曜日のよるたま

Mステの後のよるたま ページ7

定時に仕事を終えて、スーパーで週末に引きこもる分の食糧を買ってくることで、金曜日の夜は始まる。

今日は、玉からは何の連絡もない。

何時に来るかとか、今日は行けないとか、そういうのも全く。

夕食のパスタを食べながら、テレビをつける。

…あ、玉だ。

よそ行きの顔をして微笑んでる玉は、いつもこの部屋でやりたい放題で我儘な玉とは、やっぱり全然違う。

先週は「ちょっとだけ寝かせて」とか言いながら、ガッツリ５時間くらい寝た挙句、

眠くなってきた私を無理矢理に引き止めて、一緒にゲームをしたんだっけ。

本当に自分勝手で我儘な玉。

朝の８時頃に、爽やかな顔をして、

「じゃ、仕事行ってくるわ」

って、そのまま出かけて行ったけど。

…あ、歌が始まった。

この人は…、本当にあの玉森裕太なんだろうか。









今夜も例のコンビニに寄って来た彼は、先週と同じくらいの時間に我が家に訪れた。

「行ったの？セブンイレブン」

そんな私の問いかけに、玉は不満そうにレジ袋を突き出してくる。

「今日は完全にオーラを消してたから、誰にも気付かれてないと思う」

そんなこと言ってるけど、その服装…。

確かに地味にはしてるけど、やっぱり滲み出る玉森裕太感は隠しきれてないような気がする。

レジ袋とは別に、彼は有名ブランドのショッパーを私に突き出してきた。

「…何？」

受け取って見てみたら、中身はМステのティッシュと、乱雑に入れられた何本かのLAVONが入っていた。

「高くて買えないって言ってたから、くれてやる
うちにはたくさんあるから」

今日の仕事中、ずっと持ち歩いてたわけ？これを。

そんな玉の姿を想像しただけで、笑いがこみあげてくる。

すました顔をして、この袋を提げてテレビ局の廊下を歩いてたなんて、

玉って、相当に可愛いヤツだな。








「見たよ、Мステ」

そんな私の問いかけも、玉は聞こえてないふりをしてくる。

どうやら、私に仕事の感想を言われるのが嫌みたいだ。

私がSwitchを取り出したら、何故か玉は勝手に私のPS4を起動させてしまう。

「Switch、持って来るの忘れたの？」

「持ってる
でも今日のルーティンは終わらせちゃったから」

「出してよ」

強気な口調でそう言ったら、玉はめんどくさそうな顔を見せる。

「先週、玉の島に遊びに行くって話になってたのに、寝ちゃったから行けなかったじゃん」

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