金曜日のよるたま

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「それ、そっくりさんなんじゃないの？」

引きつり笑いでそう言ってみるものの、後輩の勢いはおさまらない。

「なんかね、つばの広い帽子をかぶって、目の下ギリギリまでマスクしてたりするらしいですよ」

逆にそこまで変装してんのに、見つけられてしまう彼のオーラもすごいんだけど。

「玉森くんを見たって人は、何人もいるの？」

「私の聞いた限りでは３人です
コンビニの店員さんと、会社の前の居酒屋の店員さんと、今日会ったクライアントの営業さんです」

…けっこう見られてんじゃん。

郊外だからって油断してたんじゃないの？









今日も玉は、セブンイレブンの袋を提げて我が家を訪れる。

時刻は夜の２３時。

ここんとこは仕事が毎日忙しいらしい。

「おつかれー」

とか、全く感情のこもってない声で部屋に入って来た玉は、レジ袋ごと私に突き出してくる。

「なんかコンビニ、今日は何も売ってなかったから、お菓子しか買ってないけど」

私が袋の中身を確認しているうちに、もう彼はswitchを取り出している。

「どこまで進んだ？
俺もう、商店が大きくなったけど」

この負けず嫌いめ。

どう考えても、ズルして日数を進めてるじゃん！

コンビニができる条件は、村に住み始めてから１０日以上経たないと無理なんだよ。

だけどそこは、ツッコミを入れないでおく。









「会社で聞いたんだけどね、この辺りに玉森裕太が住んでるって噂になってるらしいよ」

ずっとゲーム画面を凝視してた玉も、さすがにその言葉には素早く反応してきた。

「は？どういうこと？」

「セブンイレブンで見かけたって人が何人もいるんだって」

「絶対に気付かれてない自信があったんだけど
だって俺、気配消してるし」

少なくとも、そんなモードなスタイルの男子はこの辺りにいないから。

きっと服装だけで目立ってる部分もあるんじゃないかな。

まあ、それは言わないでおくけど。

玉は負けず嫌いだから、そんなこと言ったら更に言い返してきそうだから。









「今度からコンビニに寄ってくるのやめたら？」

そうアドバイスしてみても、玉からの返事はない。

５分くらい経ってからようやく、

「やめない
更に気配を消すことを強化するからいい」

とか言いながら、彼はあくびを軽く噛み殺している。

「疲れてるんじゃないの？
今日はもう帰ったら？」

心配してあげてんのに、その言葉も聞こえないふり。

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