金曜日のよるたま

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今日の玉の仕事は、終わり時間がよくわからないらしい。

『勝手に入って待っててくれていいから』

玉はそう言ってたけど、留守の部屋に入るっていうのは抵抗があるわけで。

『21時には戻ってるかも』

っていう玉の言葉を信じて、21時をめざして玉の部屋に到着。

相変わらず、マンションに入って部屋にたどり着くまでに、ものすごく気力を奪われてしまう。

コンシェルジュがいるようなマンションって、本当に存在してるんだ？ってくらいに別世界過ぎて。

恐る恐る合鍵を鍵穴に差し込んで、解錠。

優雅な動きをするドアを開ければ、自動的に玄関の灯りがついて、それにもいちいち驚いてしまう。

…てか、帰ってきてないじゃん。






リビングのこの間座らせてもらったソファーに座ってみたけど、やっぱり落ち着かない。

こんなに広くてゴージャスな部屋で、玉は1人で何を思って暮らしてるんだろう。

そんなことを考えてたら、玄関から微かな音がして、帰ってきたらしき玉がリビングに悠々と入って来た。

「おつかれー、来てたんだ？」

って、白々しい。

そっちから呼びつけておいて。

隣に座ってきた玉は、満足げに微笑みながら私の顔を覗き込んでくる。

「１人で来れた？」

「来れるわ！」

なんだろう、今日の玉はいつもよりムカつく。

同い年なのに大人ぶって、頭なんか撫でてくるから、ますます腹が立つ。








そんな話をしているうちに、千歩からLINEが来たのを、玉は見逃してはくれなかった。

「LINE来たよ」

「…知ってる」

「見たら？」

「後でね」

そう言ってんのに玉は意外に折れてくれないから、仕方なくLINEを開いてみる。

玉に見られないように、こっそりと。

『この間の合コンで会った篠田くんがね、Aの連絡先が知りたいんだって
LINEのID教えてもいいかなあ？』

なのに、いつものようにちゃっかり覗き込んできた玉は、

「篠田って？」

とか、尋問モードに入ってくる。

「覚えてない」

だって、それどころじゃなかったし。

両隣にいた人の顔ですら、思い出せないのに。

玉は横からその長い指を差し込んできては、

「無理」

と勝手に送信してしまう。

「勝手に送んないでよ」

「だってAもそう送るつもりだったんじゃない？」

まあ…、そうだけど。

実際、本当に顔も覚えてないしね。








『玉森くんでしょ？この返信』

千歩からすぐに返事が届く。

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