ペパーミントブルーソルベ

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夏休みに入ってからも、二階堂先生はやっぱり家に訪れる。

最初は日曜日だけだったのが、週に２日。

私は夏休みなんて関係なく仕事だから、帰ってきたら先生がいる状態で。

瑠宇は宿題なんかを見てもらいながら、うれしそうに隣の二階堂先生を何度も何度も見上げている。

そんな２人を見ながら、私は１人、複雑な気分を抱いていた。








それは、3日前の帰り道のこと。

近所のおしゃべりなおばあちゃんに捕まってしまった。

スーパーを出たところで鉢合わせしちゃって、案の定、質問攻めにされてしまう。

「最近、小さい男の子がAちゃん家に住んでる？」

…そう来たか。

瑠宇のことはまだ、ご近所さんには何も話してないんだった。

「姉の子です
仕事で今、遠方にいるので、しばらくうちで預かってるんです」

なるべくにこやかにそう告げて立ち去ろうとしてたのに、おばあちゃんは私の手首をぎゅっと掴んで離さない。

「あと、最近その子どもとよく遊んでる男の人が来てるんだって？
まさか、Aちゃんの彼氏？」

「違いますって、その子の学校の先生です」

言ったあとで、後悔してしまった。

だってこのおばあちゃんの影の呼び名はスピーカーで、噂をどんどん広めてしまうので有名だから。









案の定、その日の帰り、また二階堂先生は私を公園へ呼び寄せた。

この間みたいに２人でブランコに乗りながら、

「あのさ…」

先生は言いにくそうに話しはじめる。

「学校にクレームの電話が来ちゃって
俺が瑠宇の家に行くのは、特別扱いになるんじゃないかって」

…やっぱり。

あのおばあちゃんが、言いふらしちゃったに違いない。

「それ、私のせいかもしれない
この間、近所の噂好きのおばあちゃんに先生のこと聞かれて、つい担任の先生だって言っちゃったから」

「Aのせいじゃないって
前々から保護者の間で噂になってたみたい
Aん家、若い女の子の２人暮らしだし、そんな所に俺が頻繁に出入りするのはおかしくないかって」

私達の間には沈黙が流れ、お互いがブランコを揺らす錆びた金属の音しかしなくなった。

でも私には、その寂しげな音さえも愛おしく思える。







「それでも、なんとかして瑠宇やA達をサポートできる方法を探すから」

二階堂先生の目は予想以上に真剣で、やっぱり私の胸は疼く。

瑠宇といる時は子どもっぽく見える先生が、2人でいる時に限って、大人の男性に見えてしまうんだ。

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