曖昧なモルヒネ

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「下剋上？」

「Aさんが無断欠勤したもんだから、課長の機嫌が悪くて
大声でAさんの悪口を言ったり、他の社員に八つ当たりしたりしてたんですけど
そのうちにとうとう、主任が「課長のパワハラのせいじゃないですか？」とか言っちゃって」

まさか、あの主任が？

いつも私が攻撃されてる時だって、我関せずって感じで助けてもフォローしてもくれないから、てっきり冷酷な人だと思ってたのに。

「課長は余計に怒っちゃったけど、もう他の社員も加勢して課長に総攻撃みたいな状態になって
最近はAさんがターゲットにされてたじゃないですか？
それにセクハラもけっこうありましたよね
Aさんもやたらと、肩とか腰とか触られてましたし
他の女子社員もやられてたので、女子社員も総出でブチ切れましたよ
もちろん私も、言いたいこと言ってやりました
課長をコンプライアンス委員会に報告するって、今もまだ大騒ぎしてる最中です」

…たかが一社員の無断欠勤で、すごいことになってない？

「だからAさんは安心して、今日は休んでてください
有給申請しときますから」

そう言われて、電話は切れたけど。

コンプライアンス委員会に報告されたら、…もう課長は終わりだろうな。

スッキリはするけど、ちょっと後味は悪い。








時計の針は夕方４時。

することがなくなった私は、またロフトへ逆戻り。

そっと彼の隣に潜り込んだら、

「…何だった？電話」

目を閉じたまま、眠そうな声で訊ねてくる。

かいつまんで説明したら、

「ふーん、いいことあったじゃん」

って彼は、大きく伸びをして背を向けた。

「何時に起こしたらいい？もう４時だけど」

「４時５０分くらい？
あ、シャワー貸してよ」

「いいけど」

「それとも…、もう一回しとく？」

急にこちらに振り返った彼は、さっきまで閉じていた瞼を開いて唇に指を載せてくる。

私が返事をしないうちに、その指を唇に置き換えてくるから、また私はじわじわと彼の世界に取り込まれてしまう。

…ああ、何で私は、こんなに簡単な女になっちゃったのかな。









指定された起床時間の１０分前。

私達は中途半端に服を脱ぎ捨てた状態で、ベッドの上にいた。

いつもはそっけないくせに、事後の彼は私の瞼を指でなぞったり、いきなり抱き寄せてきたりと、アフターサービスもぬかりがない。

「いつもそんな感じ？」

「何が？」

「ベッドの中だと人が変わったみたいに見える」

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