曖昧なモルヒネ

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いつまで起きてたのかは、覚えていない。

一回じゃすまなくなって、空が白み始めた頃までの記憶しかない。

そして、外から子ども達の甲高い声で、ようやく目を覚ました。

こんな風に、目覚ましもかけずに目が覚めるのはいつぶりだろう。

毎日仕事に追われて、週末も闇雲に予定を入れて。

生き急いでるって感じて、ちょっと無理してたかも。

大きく伸びをして、隣でまだ眠っている彼に目をやる。

いつも偉そうな彼の寝顔は、意外に子どもっぽくて。

…それにしても私は、なんてことをしてしまったんだろう。

正直、付き合ってもない人とこんなことをしてしまうのは初めてだった。








彼を起こさないように、そっとロフトから降りて。

カーテンの外を覗くと、ちょうど小学生が下校している様子が見えて…、急に現実に引き戻された。

…待って！

今日、平日だよね？

会社は！？

てか、目覚ましは！

スマホはどこに置いたっけ。

確か昨日、鞄の中に入れたっきりだったかも。

ガサガサと鞄を探していたら、

「探してんの、これ？」

ロフトの上から、不機嫌そうな低音の声が聞こえてくる。








顔を上げたら、ロフトの柵越しに彼がスマホをちらつかせながら、私を見降ろしていた。

「朝、目覚ましがうるさかったから止めた
あと、電話がガンガンかかってくるから、電源も落としといたけど」

そう言って、ロフトの上からスマホを手渡してくる。

…本当に電源切られてるし。

慌てて電源を入れている私をよそに彼は、

「もう少し寝かして
５時に開店準備が始まるから、それまで」

そう言い残して、ロフトの奥に消えて行ってしまった。

電源の入ったスマホのディスプレイには、夥しい数の着信の通知が並んでいて、

途方に暮れた私は床に座り込む。

…どうしよう。

きっとパワハラ課長は私の無断欠勤を怒髪天の勢いで怒りまくり、なんなら他の社員達に被害が被るほど当たり散らしてるはず。








だけど社会人として無断欠勤はよろしくない！

無断に心臓を高鳴らせながら、会社に電話をかけた。

…パワハラ課長が出たらどうしよう。

だけど肩透かしなことに、電話に出たのは後輩の女子社員で、

「ごめんなさい、体調が悪くて、会社に欠勤の連絡をするのを忘れてて…」

言い訳を並べようとした私の言葉を、いきなり遮ってきた。

「Aさん、今日は休んでいいですよ
今、課内が下剋上状態になってますから」

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