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「Aと初めてバーで会った時、夢で出てきた人に似てるなって思ったんだけど
今日、分娩室でこの子を抱いた時に、なんかぶわーってあの夢のシーンが再現されちゃって
あの夢、正夢だったんだなあって思って」

ああ、だからなんだ。

あの時、目を潤ませてたのは。

「その夢を見た頃の俺は、なんか行き詰ってた頃だったから
もう子どもは持てないはずなのに、何であんな夢見たんだろうって、ずっと不思議に思ってた」

しばらくの沈黙のあと、

「そっちに行っていい?」

っていう、甘えてるような声が聞こえてきて、彼が近付いてきた。







ベッドの端の腰かけた彼は、私の髪を撫で始める。

「A、ありがとうな」

しみじみと、彼はそう告げたあと。

「もう、子どもなんて持てないと思ってたから」

ほらまた、泣きそうな顔をしてるよ?

そんなの、宏光のキャラじゃないじゃん。

「今までの人生の中で、今が一番幸せかも
ありえないくらい満たされてる
これもAのお陰だと思う」

ずっと頭を撫でられているうちに、どんどん眠気が襲ってきて、

宏光のそんな語りを聞きながら、私は安心して眠りについた。

宏光を幸せにできてよかった。

私も、そんな宏光を見ているだけで幸せ。







育児休暇を取った彼は、翌日からずっと病院に棲みつくようになった。

個室の部屋で、宏光はいつまでも赤ちゃんの顔を眺めている。

「名前も決めないとね、そろそろ」

赤ちゃんから視線を外さないまま、彼はそんなことを言ってくる。

なんだか慌ただしい妊婦生活で、子どもの名前を決める余裕もなかったな。

「決まったら、でっかい命名書を俺が書くから」

「どうやって?」

「言ってなかったっけ?
俺、書道の段位持ってんだけど」

知らないよ、そんなの!

本当に私達は、何も知らないまま結婚しちゃったんだな。








そんな話の途中、急に病室のドアがノックされた。

てっきり看護師さんだと思って返事をしたら、

顔を覗かせたのはあの、Fくんだった。

胸に大きな花束を抱えて、遠慮がちに病室に入ってきては、

「おめでとうございます」

と私に花束を渡すと、(うやうや)しく頭を下げた。

突然の出来事に私が面食らっていると、

「俺が呼んだ
Aと子どもに会わせたくて」

宏光はそんなことを言いながら、腕に抱いている赤ちゃんをFくんに見せびらかしている。

…それって、どういう意味?

何で私達をFくんに会わせたいわけ?

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りたわかめ(プロフ) - 牡丹さん» ありがとうございます。更新遅めですが、また読んでやってください♪ (2021年3月8日 16時) (レス) id: 9f29bca2de (このIDを非表示/違反報告)
牡丹(プロフ) - はじめまして!オススメのところから辿り着き、一気に読ませていただきました(☆∀☆)スピンオフも楽しみにしています!! (2021年3月8日 9時) (レス) id: 1a54c4e0e3 (このIDを非表示/違反報告)
りたわかめ(プロフ) - 汐里さん» 終わってしまいましたー♪続編も書きたいところなんですが、外伝書きたくなってきて、今ウズウズしてますw (2021年1月12日 20時) (レス) id: 9f29bca2de (このIDを非表示/違反報告)
りたわかめ(プロフ) - moraさん» 終わっちゃいましたよー(/ω\)でも外伝書きたくてウズウズしてますがwww (2021年1月12日 20時) (レス) id: 9f29bca2de (このIDを非表示/違反報告)
りたわかめ(プロフ) - nanacoさん» ありがとうございます。けっこう長い時間がかかってしまいましたが、最後まで読んでいただけてありがとうございます♪ (2021年1月12日 20時) (レス) id: 9f29bca2de (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:りたわかめ | 作成日時:2020年2月15日 12時

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