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夕方、彼が帰ってきてからも、私は今日聞いた話をなかなか話せないでいた。
私のモヤモヤした気持ちなんて気付きもしない様子で、今日も彼は平常通り。
なのに、食後に私をソファーに座らせて洗い物をしてくれてる途中、
「今日、何かあった?」
とか、いきなり切り出してきた。
「…何が?」
「なんか今日、様子が変だから」
…私的に、かなり平静を装っていたつもりなのに。
ああもう…、これは話してしまえって神様が言ってるのかな。
それに私は、秘密を抱えていられない性分なんだけど。
「今日…、前に連れてってもらった店の、店員さんにスーパーで会った」
勇気を出してそう告げたのに、彼は表情ひとつ変えずに、
「それで?」
と、先を急かしてくる。
「なんか…、いろいろ聞いた」
「うん」
この「うん」はどういう意味の「うん」なんだろう。
早く続きを話せという意味なのか、秘密を知られたという諦観の意味なのか。
「宏光に、長い間付き合ってた恋人がいた話とか」
やっぱり彼は柔らかい表情を浮かべたまま、水道の蛇口を閉める。
その所作があまりにも美しくて、そのくせ恐ろしかったから、私はその先が話せなくなってしまった。
洗い物を終えた彼は、こちらにゆっくり近づいてくる。
普段通りを装いながら、そのまま私のことを絞め殺しちゃうんじゃないかなと思うくらいの、妖艶な笑みを口元に携えながら。
隣に柔らかく腰を掛けた彼は、いつものように二の腕同士が当たるくらいの距離まで詰めてくる。
「いつか、話した方がいいのかなとは思ってた
でも、もう終わった話だし
過去のことだから、話さなくていいのかなとも思ってたり」
だから何で、そんなにリラックスしてんの?
今、私達はけっこう重い話をしてる最中なんだけど。
「聞きたかった?Aは
俺の過去の恋愛のこととか」
「…わかんない」
知りたくもあるけど、知らないままでいたいとも思う。
きっと彼の過去の恋愛は私の想像の範疇を、軽く超えてきそうな感じがするから。
「そいつとは、確かに長い間付き合ってたけど
ずっとってわけじゃなくて、その間に何度か別れたり、また戻ったりなんてのも繰り返してたから」
「いつ別れたの?その人と」
「Aと出会う1年くらい前かな」
「理由は?」
「なんだろうな…、今となってはよく覚えてないけど
基本、俺らは全然違う性質で
まあ…、簡単に言うと合わないってヤツ?」
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りたわかめ(プロフ) - 牡丹さん» ありがとうございます。更新遅めですが、また読んでやってください♪ (2021年3月8日 16時) (レス) id: 9f29bca2de (このIDを非表示/違反報告)
牡丹(プロフ) - はじめまして!オススメのところから辿り着き、一気に読ませていただきました(☆∀☆)スピンオフも楽しみにしています!! (2021年3月8日 9時) (レス) id: 1a54c4e0e3 (このIDを非表示/違反報告)
りたわかめ(プロフ) - 汐里さん» 終わってしまいましたー♪続編も書きたいところなんですが、外伝書きたくなってきて、今ウズウズしてますw (2021年1月12日 20時) (レス) id: 9f29bca2de (このIDを非表示/違反報告)
りたわかめ(プロフ) - moraさん» 終わっちゃいましたよー(/ω\)でも外伝書きたくてウズウズしてますがwww (2021年1月12日 20時) (レス) id: 9f29bca2de (このIDを非表示/違反報告)
りたわかめ(プロフ) - nanacoさん» ありがとうございます。けっこう長い時間がかかってしまいましたが、最後まで読んでいただけてありがとうございます♪ (2021年1月12日 20時) (レス) id: 9f29bca2de (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:りたわかめ | 作成日時:2020年2月15日 12時