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「じゃあ、北山が今住んでる家は?」

「今はバーの近くにワンルームを借りてる」

「もったいなくない?」とか、言いそうになってやめた。

確かにあの家に1人で住むのは、なかなか勇気がいることなのかもしれない。

「近いうちにそこも引き払う
だからAも今の部屋を引き払って」

そう言った彼の横顔が、まるで泣いてるようにも見えて、繋いでたその手をぎゅっと握り直した。

まだお互いのことを何も知らない私達は、数日後から、この部屋に住むことになる。









引っ越しの日の前日、私達は改めてこんな話をしていた。

「ところで、北山って何者なの?
ただのバーテンダー?
この先、仕事はどうするつもり?」

ダンボールだらけの部屋を見下ろすロフトの上で、私達はそんな会話を繰り広げていた。

引っ越しのことばかりに気を取られて、込み入った話を一切していなかったわけで。

引っ越し前夜になってようやく、私は彼にそんな話を切り出したというこの不可思議な状態。

「バーテンダーはここ1年ほど、伯父さんの店を手伝ってたけど
昼間は普通の仕事をしてた」

「普通の仕事って何?」

「行政書士の事務所で何年か」

ちょっと待って!

キャラじゃなくない?

悪いけど、いっそのことホストとか怪しい職業って言われた方が納得できるのに。

「昼も夜も働いてたってこと?」

「だってローンも払わないといけないし」

「ローン…、まだいくらか残ってるんだっけ?」

「300万ほどね」

「一体いくらだったの?あの家」

「2500万くらい?」

サラッとそう言いのけた彼をじっと見つめてみる。

いや、2200万、もう払っちゃったわけ?

それってすごくない!?

この男、意外とデキる男なのかもしれない。







「まだ事務所に籍があるから
そこに戻ろうかと思ってんだけど」

「行政書士事務所に勤めるってことは、何か資格とか持ってるとか?」

「持ってるよ、行政書士の資格」

…マジか。

本当に似合わない資格なんだけど!!

それともうひとつ、聞いておかなければならないことがある。

それは…、彼の両親のこと。

「あのさ、ご両親に挨拶とか行かなくていいのかな」

「あー…、うちの親はいいわ
それよりAんとこには行かなきゃね」

まるで他人事のように、彼はふわりと笑う。

ねえ、私達、本当に大丈夫なのかな。

こんな見切り発車で、結婚生活、うまくやっていける?

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りたわかめ(プロフ) - 牡丹さん» ありがとうございます。更新遅めですが、また読んでやってください♪ (2021年3月8日 16時) (レス) id: 9f29bca2de (このIDを非表示/違反報告)
牡丹(プロフ) - はじめまして!オススメのところから辿り着き、一気に読ませていただきました(☆∀☆)スピンオフも楽しみにしています!! (2021年3月8日 9時) (レス) id: 1a54c4e0e3 (このIDを非表示/違反報告)
りたわかめ(プロフ) - 汐里さん» 終わってしまいましたー♪続編も書きたいところなんですが、外伝書きたくなってきて、今ウズウズしてますw (2021年1月12日 20時) (レス) id: 9f29bca2de (このIDを非表示/違反報告)
りたわかめ(プロフ) - moraさん» 終わっちゃいましたよー(/ω\)でも外伝書きたくてウズウズしてますがwww (2021年1月12日 20時) (レス) id: 9f29bca2de (このIDを非表示/違反報告)
りたわかめ(プロフ) - nanacoさん» ありがとうございます。けっこう長い時間がかかってしまいましたが、最後まで読んでいただけてありがとうございます♪ (2021年1月12日 20時) (レス) id: 9f29bca2de (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:りたわかめ | 作成日時:2020年2月15日 12時

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