曖昧なモルヒネ

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…呆れた。

でも彼の言うことは当たってる。

彼の味を一度知ってしまうと、もう彼としか考えられなくなるから。

「どう？
俺と一緒に、子どもを育ててみる気になった？」

彼はぐいっと顔を近づけると、私が逃げ出さないように後頭部に手を添えてきた。

至近距離で見つめあったまま、尋問は始まる。

「俺、いい父親になる自信はあるけど？」

「自信だけあっても意味なくない？」

「子育ては俺がメインでもいいよ」

「子育てだけ？」

「家事は苦手だけど、やればできんじゃない？」

「それって、私が外で働いてる間、北山が家で育児するってこと？」

「俺も働く」

「バーテンダーで？
夜いないとか嫌なんだけど」

こんな会話を繰り返しているうちに、不思議なもんで私の心はどんどん穏やかになっていく。

私、産んでもいいのかな。

でもこの男を、信用していいわけ？

床上手なだけでカクテルしか作れない、このビッチな男を。








「そろそろ、本題に入っていい？」

まだ至近距離のまま、会話は続く。

「私達、結婚するの？」

「その方が便利なんじゃない？」

「北山、結婚の意味わかってる？」

「わかってるけど？」

「結婚したら、他の人と恋愛しちゃいけないんだよ」

「知ってる」

「できんの？そんなこと」

「できるだろ」

何？その軽い感じ。

そんなんじゃ、全然私は納得できない。

「恋愛感情なしでも、体の関係とかは持っちゃいけないんだよ？」

大真面目に言ってるのに、彼はくすくすと笑いはじめる。

「そうなるだろうね」

「他の人と恋愛したり寝たりするのは、契約違反になっちゃうの
わかる？」

「わかるよ」

だから何で、そんなに笑いをこらえたような顔をしてるわけ？

今、大事な話をしてるんだけど！









「できんの？それ」

「できるだろ」

「簡単に言うな」

彼はずっと表情を緩ませたままで、私のおでこに自分のおでこをこつんとくっつけた。

「大事にする、ずっと」

それ、今言う？

てかそれ、プロポーズってこと？

「仲良く暮らして行こう」

「それって、一生？」

さすがにその問いかけには、彼は即答してこない。

「結婚ってそういうもんだよ」

「知ってる」

「じゃあ私達、結婚するの？」

「しようよ
子どもが産まれるんだし」

いやいや、そうなんだけど。

結婚って、そんなに軽いノリでいいの？

だから私は、究極の質問を投げかけた。

「そもそも北山は、私のこと好きなの？」

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