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どう冷静に考えても、今の状況で子どもを産むことは出来ない。
独身だし、1人で子育てなんて無理だし、そもそも仕事はどうするわけ?
保育園は何ヶ月から預けられるの?
そして、田舎でのんびり暮らしている優しい両親に、「シングルマザーになります!」なんて、とても言えないわけで。
部屋でぐじぐじ考えてても、結論は出ない。
とにかく街へ出よう!
土曜日の昼下がりは、行く先々に人が溢れていた。
買い物をしてる家族連れや、手を繋いで仲良さげなカップル。
なのに私は一人。
道端の公園では小さな子どもがよちよちと歩いていて、それを見守ってる若いお父さんお母さんがいて。
その光景を見ながら、私は道の端っこでボロボロと人目もはばからず涙を流してしまった。
全部、私のせいだ。
私の意志が弱いばっかりに、あんな男に引っかかってしまって。
私はなんてバカなんだ。
結局どこにも行くことはなく、一人暮らしのマンションに帰ってきた私を待ち構えてたのは、少し薄汚れた塊だった。
部屋のドアの前で、大きなバックパックを抱えて、座り込んで眠ってる男。
「…北山?」
名前を呼んでみるけど、ピクリともしないその顔を覗き込んだら、やっぱり彼だった。
乱暴に揺り起こすと、史上最悪な不機嫌な顔をしてヤツは目覚める。
「何してんの?こんなとこで」
「…帰ってきたんだけど、普通に」
いや、そうじゃなくて。
何でこのタイミング?
しかも、こんなヨレヨレのボロボロな風貌で。
部屋に入れてみたけど、今日の彼はなんだかいつもと雰囲気が違って見える。
「なんか、本当に北山?
違う人みたいになってない?」
「まあ、どっぷり浸かってたからね
向こうの世界に」
「なんか、匂いも違う気がするんだけど」
彼の首元に顔を近付ければ、やっぱりいつもと違う匂いがする。
「まあ、向こうでカレーばっか食ってたしね
食べるもので匂いも変わるらしいよ」
彼は涼しい顔をして、Tシャツを脱ぎ始める。
「…何?」
「いや、シャワー借りようと思って」
彼は洗面所の洗濯機に着ていた服や、バックパックの中の洗濯物を全て洗濯機に投げ込むと、そのままバスルームに消えて行ってしまった。
洗濯機を動かしながら思うのは、一体この人は何をしに来たんだろうってことと、
シャワーから出てきたら、手術の同意書にサインを書いてもらおう、とか。
そんなことを淡々と考えていた。
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りたわかめ(プロフ) - 牡丹さん» ありがとうございます。更新遅めですが、また読んでやってください♪ (2021年3月8日 16時) (レス) id: 9f29bca2de (このIDを非表示/違反報告)
牡丹(プロフ) - はじめまして!オススメのところから辿り着き、一気に読ませていただきました(☆∀☆)スピンオフも楽しみにしています!! (2021年3月8日 9時) (レス) id: 1a54c4e0e3 (このIDを非表示/違反報告)
りたわかめ(プロフ) - 汐里さん» 終わってしまいましたー♪続編も書きたいところなんですが、外伝書きたくなってきて、今ウズウズしてますw (2021年1月12日 20時) (レス) id: 9f29bca2de (このIDを非表示/違反報告)
りたわかめ(プロフ) - moraさん» 終わっちゃいましたよー(/ω\)でも外伝書きたくてウズウズしてますがwww (2021年1月12日 20時) (レス) id: 9f29bca2de (このIDを非表示/違反報告)
りたわかめ(プロフ) - nanacoさん» ありがとうございます。けっこう長い時間がかかってしまいましたが、最後まで読んでいただけてありがとうございます♪ (2021年1月12日 20時) (レス) id: 9f29bca2de (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:りたわかめ | 作成日時:2020年2月15日 12時