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臨月に入る頃になり、私は1年間の産休に入ることになった。
今まで不器用ながらに彼がしてくれていた家事も、とうとう私の仕事になってしまった。
だけど、夕暮れに大きいお腹を抱えてスーパーに通うのも、意外と悪くない。
スーパーでのんびり精肉コーナーに居座っていたら、どこかから視線を感じた。
その視線は、身震いすら感じるほどの強烈なもので、恐る恐る辺りを見回してみる。
近くの売場にいたその視線の主は、私と目が合うと、覚悟を決めたような顔をしてこちらに向かって歩いてきた。
「確か、ミツの奥さん、だよね?」
前に会った、レストランの店員さんだ。
あの日と同じように、上から下まで舐めるような視線を私に向けてきては、
「もしかして、もうすぐ産まれるの?」
険しい表情で、そう訊ねてくる。
「…はい」
そう答えながら私は、無意識に一歩下がってしまっていた。
だけどその距離も、彼に簡単に詰められてしまう。
「ちょっと時間いい?
話しておきたいことがあって」
有無を言わせないその雰囲気に負けた私は、怯えからか頷いてしまった。
とりあえず買い物を済ませて、スーパー近くのファストフードへ連れ込まれた私は。
正直、手足がありえないくらいに震えていた。
とにかく、この人の目が怖いんだ。
ほら今だって、向かい合わせに座った私のことを、まるで値踏みでもするように遠慮なしに見つめてくる。
「そんなに怖がらなくていいから」
そうは言ってくれるけど、その目が怖いんだって。
やっぱり私は、無言で頷くことしかできない。
「別に取って食うわけじゃないから
それより、あなたにちゃんと言っておきたいことがあって」
それって、絶対によくない話だよね?
ミツは渡さない、とか、ミツがバイだなんて嘘だ、とか。
「あなたはミツのことを、どれくらい知ってるわけ?」
思い詰めた目をして、彼はテーブルに身を乗り出してくる。
「ミツがゲイだったことは知ってるんだよね?」
やっぱり私は高速で頷くだけ。
「ミツがバイだって話は噂には聞いてたけど、私もにわかには信じられなくて」
「それって、宏光に彼女がいたことがないってことですか?」
「ミツとはもう長い付き合いだけど、俺の知ってる限りでは、彼女がいたなんて聞いたことないけどね」
なんでだろう、胸がざわざわしてくる。
でもこの人なら、宏光の真実を知ってるのかもしれない。
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りたわかめ(プロフ) - 牡丹さん» ありがとうございます。更新遅めですが、また読んでやってください♪ (2021年3月8日 16時) (レス) id: 9f29bca2de (このIDを非表示/違反報告)
牡丹(プロフ) - はじめまして!オススメのところから辿り着き、一気に読ませていただきました(☆∀☆)スピンオフも楽しみにしています!! (2021年3月8日 9時) (レス) id: 1a54c4e0e3 (このIDを非表示/違反報告)
りたわかめ(プロフ) - 汐里さん» 終わってしまいましたー♪続編も書きたいところなんですが、外伝書きたくなってきて、今ウズウズしてますw (2021年1月12日 20時) (レス) id: 9f29bca2de (このIDを非表示/違反報告)
りたわかめ(プロフ) - moraさん» 終わっちゃいましたよー(/ω\)でも外伝書きたくてウズウズしてますがwww (2021年1月12日 20時) (レス) id: 9f29bca2de (このIDを非表示/違反報告)
りたわかめ(プロフ) - nanacoさん» ありがとうございます。けっこう長い時間がかかってしまいましたが、最後まで読んでいただけてありがとうございます♪ (2021年1月12日 20時) (レス) id: 9f29bca2de (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:りたわかめ | 作成日時:2020年2月15日 12時