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「はい、終わり」

乾いた髪を指でサラリと掬ってから、髪の束にすっと鼻を近付けて、

「いい匂い」

そう言った彼とまた、鏡越しに目が合った。

何?その目。

挑戦的な上に、目の奥に色気をちらつかせて、しばらく見つめてきてはふいっと目を逸らすその行為は、胸の奥をざわざわと暴れさせる。

「部屋…、行く?」

その声があまりに艶っぽくて、もう立ち上がれなくなりそう。

「離れ」「2人きり」「みんなとは棟違い」いろんな単語が脳内に飛び始める。

やっぱ無理だ。

北山宏光と正面対峙だなんて、私には無理すぎる。








離れの2階が、今夜の私達の寝所。

母屋と比べて離れはまだ造りが新しく、部屋に入った途端に仄かにい草の香りが漂ってくる。

何故か布団がいい感じにくっつけて敷かれてあり、彼はその真ん中に胡坐をかくと、可愛らしい笑顔を見せて私を見上げてきた。

「明日、この近くにある温泉にみんなで行くんだって」

ねえ…、何でこの状況でその笑顔が出せるかな。

私なんかさっきから、まともに彼の目すら見られないのに。

どうしていいかわかんなくて、入り口近くにただ立ち尽くしているだけ。

だから、明日の温泉の問いかけにも、

「…うん」

とか、作り笑いで答えることしかできない。









なのに彼は、それをからかうこともなく、黙って立ち上がる。

そして目の前に立つと、

「迎えに来た」

とか言いながら、はにかんだ笑みを見せつけながら、右手を差し出してくる。

その手に触れることも出来ない私に苦笑いしながら、彼は私の右手首を緩く掴んだ。

誘導するように布団の傍に連れてきては、私を座らせる。

自分もその隣に腰かけては、

「顔、固まっちゃってる」

くすくす笑いながら、隣から頬を突つかれても、まだ私は上手く笑えないでいた。

「まだ無理?」

大人びた声をして顔を覗き込まれても、やっぱり私はその視線から逃れることしかできない。

「あんなに練習したのにね」

からかい口調でそう言われても、やっぱり私には無理。

まだ練習が足りないんだって!







彼は私のそんな様子も気にならないみたいで、大人びた笑みを携えたまま、私の髪を指で弄ぶ。

そして、

「キスしていい?」

って、私の返事も待たないで顔を近づけてくるところが、あまりに北山宏光すぎて

そんな彼の行動に一瞬で腰が砕けてしまった私は、そのまま後ろ向きに布団に倒れ込んでしまった。

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りたわかめ(プロフ) - えりさん» ありがとうございます、多分、3ヶ月ぶりくらいに更新した気がします・・・。夏の間は死んでました(T^T) (2020年9月6日 21時) (レス) id: 4a0ecf03f1 (このIDを非表示/違反報告)
りたわかめ(プロフ) - ひろさん» 本日、移行しました!読んで頂けたら嬉しいです(/ω\*) (2020年9月6日 21時) (レス) id: 4a0ecf03f1 (このIDを非表示/違反報告)
えり(プロフ) - わかめさん、更新ありがとうございました。めちゃくちゃドキドキです。 (2020年9月5日 17時) (レス) id: 8591dd4797 (このIDを非表示/違反報告)
ひろ(プロフ) - 久々の更新楽しみにしてました!!楽しく読ませていただいてます(*´ω`*) (2020年9月1日 22時) (レス) id: 57f2f46317 (このIDを非表示/違反報告)
りたわかめ(プロフ) - moraさん» わざわざ聞かせてみましたwwwいこう!ってwwww (2020年9月1日 22時) (レス) id: 9f29bca2de (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:りたわかめ | 作成日時:2020年2月7日 22時

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