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30分ほどして、お風呂から戻ってきた彼は、

「ちょっとだけ、ここで寝てていい?」

とか言い出すから、慌ててその手首を掴んだ。

「待って!
一人でお風呂とか、怖いんだけど」

「何で?」

「だって離れだし
誰もいないじゃん」

「じゃあ、もう一風呂、俺が付き合ってやってもいいけど」

「それはやだ」

そう即答しただけで、彼は弾けるように笑い出す。

「怖いんだ?A」

悪戯を思いついたような目をして、掴まれた手首を解きにかかる。

それでも私が離さないもんだから、彼はますます面白がって、

「ついて行ってやろうか?お風呂」

とか、うれしそうに訊ねてくる。








「脱衣場で待っててほしい」

「脱衣場?」

「私が着替えるまでは入らないでよ?
お風呂に移動したら合図するから、脱衣場にいてほしい」

「いいけど、脱衣場でぼーっと待っとくわけ?」

「話し相手になってよ
一人とか、怖すぎる」

私の口から「怖い」という単語が出る度に、彼はますます面白がる。

「Aでも怖いものあるんだ?」

みたいな感じで。







そして約束通り、脱衣場のガラス戸1枚隔てた状態で、私はお風呂に入っていた。

それは普通の家庭のお風呂よりちょっと大きい程度の、コンパクトなお風呂で、

すりガラス越しに、こちらに背中を向けてスマホを見てるっぽい彼の姿が見える。

体を洗って湯船に浸かってようやく、彼に声をかけた。

「いる?」

「…いるよ」

意外に優しげな声が返ってきて、たったそれだけのことで私は深く安心できた。

「退屈?」

「大丈夫、ゲームしてるし」

「もう上がろうかな」

「もうちょい暖まれば?
今夜は寒いから」

「…今、何時?」

「3時」

3時!?

もうそんな時間になってたんだ。






「そうそう、俺らの部屋、この離れの2階の部屋に変更になったから」

「どういうこと?」

「霞さんが、離れの2階の部屋に寝ろって
荷物も、もう移動させといた」

「いいけど…、でも何で?」

「この離れの2階、部屋がひとつしかないんだって」

って…、待って!

私達だけ、みんなとは離れた建物に泊まるとか!

きっと霞さんが気を使ってくれたんだろうけど、あからさま過ぎるんだって!

「もう出る?」

彼が立ち上がる気配がしても、わたしはお風呂から出られずにいた。

今夜はないと勝手に思い込んでた。

でも時刻は夜中の3時。

眠そうな彼の声。

大丈夫、今夜は絶対にないよ。

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りたわかめ(プロフ) - えりさん» ありがとうございます、多分、3ヶ月ぶりくらいに更新した気がします・・・。夏の間は死んでました(T^T) (2020年9月6日 21時) (レス) id: 4a0ecf03f1 (このIDを非表示/違反報告)
りたわかめ(プロフ) - ひろさん» 本日、移行しました!読んで頂けたら嬉しいです(/ω\*) (2020年9月6日 21時) (レス) id: 4a0ecf03f1 (このIDを非表示/違反報告)
えり(プロフ) - わかめさん、更新ありがとうございました。めちゃくちゃドキドキです。 (2020年9月5日 17時) (レス) id: 8591dd4797 (このIDを非表示/違反報告)
ひろ(プロフ) - 久々の更新楽しみにしてました!!楽しく読ませていただいてます(*´ω`*) (2020年9月1日 22時) (レス) id: 57f2f46317 (このIDを非表示/違反報告)
りたわかめ(プロフ) - moraさん» わざわざ聞かせてみましたwwwいこう!ってwwww (2020年9月1日 22時) (レス) id: 9f29bca2de (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:りたわかめ | 作成日時:2020年2月7日 22時

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