40 ページ40
「待ってて
シャワー浴びてすぐ戻ってくるから」
寝てるふりの私を置いて、彼はすぐに寝室を出て行ってしまう。
そして、この間と同じように驚くほどの早さで寝室に戻って来た彼は、まだ少し生乾きの髪を肩先に押し付けるようにして、
ベッドの上で私のことを抱き寄せた。
「ただいま」
さっきと同じ甘ったるい鼻にかかった声で、わざと耳元で囁いてくる。
いちいち彼の吐息が首筋に当たるのが、まどろっこしい。
こういう行為を天然でやってるのか、それとも計算してやってるのか。
「…おかえり」
動揺してるのを見破られないように、わざと冷静に言って見せるけど、きっと彼には全て見抜かれてるんだろうな。
「Aが家に来てんの、今日もすぐわかった」
「まさか、また匂いでわかったとか？」
「そう
なんかAからは甘ったるい匂いがする
色に例えたら、サーモンピンクみたいな？」
そう言っては、得意げに鼻で笑う。
サーモンピンクとか、意味わかんないよ。
でも匂いを色で例えるのは、なんとなくわかる。
別にメンバーカラーを意識してるわけじゃないけど、彼からは濃い赤の匂いがする。
それも、まばらな深紅で、たまに濃い部分があったり薄くなってたり、まるで波のリボンのように漂ってるイメージ。
だけどこんなことを彼に話しても、鼻で笑われてしまいそうだからやめとく。
「明日もこれくらいの時間になるかもしれないけど、大丈夫？」
明かりを消したベッドの上、包み込むように抱き寄せてきては、そんなことを言う。
「大丈夫って何が？」
「退屈なんじゃないかと思って
勝手にＤＶＤとか見たり、本とか読んでくれていいから」
自分で呼びつけておいて、退屈なんじゃないかと心配するとか。
彼は強気なくせに、けっこう繊細なところがある。
涼しい顔をして、実は心の中ではネガティブなことや反省なんかを繰り返してるんだろうな。
そう妄想しただけで、彼のことが愛おしくて逆に抱きしめてあげたくなってくる。
彼のことを守ってあげたい。
彼を悩ませるものから、私が全部救い出してあげられたらいいのに。
「退屈だから、大掃除していい？この部屋の」
とりあえず私ができるのはこんなことくらいだけど。
「大丈夫？
せっかくなんだから、ゆっくりすれば？」
だって、彼のプライベートを快適にしてあげるくらいしか、今の私にはできないから。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2501人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
りたわかめ(プロフ) - えりさん» ありがとうございます、多分、3ヶ月ぶりくらいに更新した気がします・・・。夏の間は死んでました(T^T) (2020年9月6日 21時) (
レス) id: 4a0ecf03f1 (このIDを非表示/違反報告)
りたわかめ(プロフ) - ひろさん» 本日、移行しました！読んで頂けたら嬉しいです(/ω＼*) (2020年9月6日 21時) (レス) id: 4a0ecf03f1 (このIDを非表示/違反報告)
えり(プロフ) - わかめさん、更新ありがとうございました。めちゃくちゃドキドキです。 (2020年9月5日 17時) (レス) id: 8591dd4797 (このIDを非表示/違反報告)
ひろ(プロフ) - 久々の更新楽しみにしてました！！楽しく読ませていただいてます(*´ω｀*) (2020年9月1日 22時) (レス) id: 57f2f46317 (このIDを非表示/違反報告)
りたわかめ(プロフ) - moraさん» わざわざ聞かせてみましたwwwいこう！ってwwww (2020年9月1日 22時) (レス) id: 9f29bca2de (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：りたわかめ
| 作成日時：2020年2月7日 22時
