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深夜に目覚めた私達は、何故かドライブに出かけることになった。

「外に出たい」

って、彼が頑なに言い張るから。

深夜1時、凍えるような真冬の夜に、彼の運転する車は更に寒そうな場所に向かって進んでいく。

「海に行かない?
夜なら誰もいないだろ」

疲れてんのに、よくそんなことを思いつくよね。

最初は後部座席にうずくまるみたいに隠れていた私は、大きな道路に出たところで助手席に移る。

運転席の彼は、私をチラ見しながらこんなことを言う。

「せっかくのクリスマスだし、どこかに出かけたいじゃん」

「クリスマスは終わってるよ
だってもう、26日だし」

こんな風に理屈っぽいことを言ってしまうのは、私の悪い癖だ。

「いいんじゃない?
ちょっと仮眠しただけだし、まだクリスマスは終わってないってことで」

そんな言葉を返されて、日付だの形式にばかり囚われている自分が恥ずかしくなった。








車を走らせて1時間くらいで海に着いた。

吐く息が白くなるほどの寒さの中、私達は手を繋いで砂浜へと続く階段を降りる。

真っ暗で、誰もいない砂浜をスマホのライトを頼りに。

砂に足を取られながら、波打ち際近くの岩場に並んで座った時には、もう深夜の2時を軽く過ぎていた。

隣に座ってる彼は、しばらく無言で真っ暗な海を眺めたあと、

不意に私の存在に気付いたような素振りで、

「寒い?」

なんて聞いてくる。

寒いに決まってる。

だけど、北山教の筆頭信者みたいな私は、彼のこんな行動にも何か意味があるんだろうと思ってるわけで。








「なんか…、何もしてあげられてないなと思って
Aに」

予想通りに、彼はそんなことを言い出しては、目を伏せる。

その横顔が、暗闇の中で恐ろしいほど美しくて、

それに見蕩れていたら、彼の言葉なんか頭に入ってこない。

「俺だけAにしてもらってばっかで
不甲斐ないな、って思ったり」

雲間からぼんやりと光る月光の下、その横顔は危なげなくらいに妖艶で、

思わず、無遠慮にその頬に指で触れてしまった。

ひんやりと冷たいその頬に触れたら、彼はようやく視線をこちらに向ける。

「何?」

口元だけで微笑んだ彼は、ゆっくりとこちらに指を伸ばして、

「仕返し」

そう言いながら唇に指で触れては、そのままその指をスライドさせるように、唇を重ねてきた。

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りたわかめ(プロフ) - えりさん» ありがとうございます、多分、3ヶ月ぶりくらいに更新した気がします・・・。夏の間は死んでました(T^T) (2020年9月6日 21時) (レス) id: 4a0ecf03f1 (このIDを非表示/違反報告)
りたわかめ(プロフ) - ひろさん» 本日、移行しました!読んで頂けたら嬉しいです(/ω\*) (2020年9月6日 21時) (レス) id: 4a0ecf03f1 (このIDを非表示/違反報告)
えり(プロフ) - わかめさん、更新ありがとうございました。めちゃくちゃドキドキです。 (2020年9月5日 17時) (レス) id: 8591dd4797 (このIDを非表示/違反報告)
ひろ(プロフ) - 久々の更新楽しみにしてました!!楽しく読ませていただいてます(*´ω`*) (2020年9月1日 22時) (レス) id: 57f2f46317 (このIDを非表示/違反報告)
りたわかめ(プロフ) - moraさん» わざわざ聞かせてみましたwwwいこう!ってwwww (2020年9月1日 22時) (レス) id: 9f29bca2de (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:りたわかめ | 作成日時:2020年2月7日 22時

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