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「入ったよ
それより、お風呂入ってきたら?」

バスルームに連行しようとしたのに、彼はふざけるみたいに私を背中から抱き寄せてくる。

甘えるみたいに肩先に顎を乗せて。

「やばい
やっぱ、帰ってきてAが待ってるとか、幸せ過ぎんだけど」

とか耳元で低音のイケボで囁いてくるから、タチが悪い。

「明日から、帰ってもAがいないとか、寂しすぎるわ」

その声があまりに切なげだったから、私までつられて切なくなる。

こういう切なさは、すぐに伝染してしまうから。

明日から日常に戻ってしまう私達は、今夜が終わってしまうのがひたすら嫌なんだ。

彼も年末にかけて、もっと忙しくなるだろうし。

だから私は、不器用に話題を逸らした。









「今日、朋から連絡が来たんだけど
旅行の話、聞いた?」

「聞いた
なんか、みんなで行くことになってなかった?」

耳元でくすくす笑う彼の笑い声は、無駄に私の鼓膜を刺激する。

それだけで私は、全身がビリビリと疼くくらいときめくのに。

「本当は2人で行きたかったけど、それはまた、次の楽しみにとっとく」

大人びた口調でそう言い終えた彼は、ようやく私からゆっくりと体を離した。

「…お風呂入ってくる
寝ないで待っててよ」

って、くしゃりと笑って。

…ヤバい。

もうそれしか言えないくらい、北山宏光との交際は、いちいち心臓がイカれそう。

彼が言動にいちいち反応してしまう、自分が嫌だ。









驚くくらいの早さで、彼はバスルームから出てきた。

また上半身裸で、濡れ髪のままで、いい匂いをさせながら。

そして片手に持ってたドライヤーを、私に手渡しながら。

髪を乾かしたあとは、ベッドに直行。

だけど、そこには何かイイコトが待ってるわけではなく、彼は朝の7時には家を出ないといけないらしい。

ほとんど睡眠時間がないじゃん!

もう今にも寝ちゃいそうな声で、彼は呟く。

「正月の旅行、楽しみだわ
今年の正月は、Aと初詣で偶然会ったんだっけ
かなり昔のことみたいに感じる」

そうだね、今年の私達はいろいろあった。

まさかこんなことになってるなんて、あの頃の私達は想像すらしてなかっただろうな。

「旅行の部屋割り、2人きりにしてくれるらしいよ」

せっかく感慨に浸ってたのに、

いきなり現実に戻さないでよ。

2人部屋なのは、朋から聞いてたけど、

…って、ちょっと待って!

まさか隣室に友達がいる状態で…、ってことじゃないよね!?

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りたわかめ(プロフ) - えりさん» ありがとうございます、多分、3ヶ月ぶりくらいに更新した気がします・・・。夏の間は死んでました(T^T) (2020年9月6日 21時) (レス) id: 4a0ecf03f1 (このIDを非表示/違反報告)
りたわかめ(プロフ) - ひろさん» 本日、移行しました!読んで頂けたら嬉しいです(/ω\*) (2020年9月6日 21時) (レス) id: 4a0ecf03f1 (このIDを非表示/違反報告)
えり(プロフ) - わかめさん、更新ありがとうございました。めちゃくちゃドキドキです。 (2020年9月5日 17時) (レス) id: 8591dd4797 (このIDを非表示/違反報告)
ひろ(プロフ) - 久々の更新楽しみにしてました!!楽しく読ませていただいてます(*´ω`*) (2020年9月1日 22時) (レス) id: 57f2f46317 (このIDを非表示/違反報告)
りたわかめ(プロフ) - moraさん» わざわざ聞かせてみましたwwwいこう!ってwwww (2020年9月1日 22時) (レス) id: 9f29bca2de (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:りたわかめ | 作成日時:2020年2月7日 22時

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