無敵のスピカ

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私以外の3人は、この後飲みに行くみたいな話し合いを始め、未成年の私は、

「お前は帰れよ？まだ20歳になってないんだから」

と、彼から釘を刺された。

私がいつまでもぶーれたれてると、

「再来月だっけ？Aの誕生日
その時は飲みに連れてってやるから」

とかサラリと言ってくるとか···、そういうとこだよ！

私のことを完全に突き放してくれればいいのに、こんな風に飴を与えてきたりする。

そういうところが、私をおかしくさせるんだ。









「お前、いつも俺とシフト一緒じゃね？」

数日後のバイト終わり、彼は不意にそんなことを言い出した。

わかってるくせに、わざと言うんだ、この人は。

「そうだね」

だから私も、知らん顔をしてそう答えた。

「今日はどうする？
またファミレスでも行く？」

「···行く」

行かないわけないじゃん！

そこでしか私は、プライベートの北山宏光を知ることは出来ないんだから。









今日の話題はモブの１人の恋愛話で、全然興味はないけど適当に相槌を打っておく。

彼の反応を横目で窺いながら、恋愛話は続く。

「でも、北山も彼女できたんだろ？」

いきなり発せられたモブの言葉に、私の思考回路は一瞬でフリーズしてしまった。

…どういうこと？

彼女できたって。

だって、彼女を作るつもりはないとか言ってたじゃん！

「…俺の話はいいから」

とか言いながら、彼は巧みに話を逸らしてしまう。

その間、彼は一度だって私の目を見ようとはしなかったから。

…この話は、真実なんだろう。









今日も私以外のメンバーは、このまま飲みに行く話をしていたけど。

私はいつもみたいに「連れてけ」とゴネることはしなかった。

ただ、みんなに手を振ってさよならをしたあと、びょうにんのようにフラフラと歩いていた。

ここから私の家まではすぐだけど、まっすぐ帰りたくない。

どこか1人になれる場所を見つけて、何日か籠っていたい気持ち。

だけど、

「A」

不意に背後から腕を掴まれて、私の思考は再び動き出す。

目の前に現れたのは、今まさに私をズタズタに傷つけた当本人で。

なのに心配そうな目をして、

「大丈夫？」

なんて聞いてくる。

何が「大丈夫？」だよ！

原因を作ったのは自分じゃん！







だけど彼のそんな顔を眺めているだけで、私の心はざわざわと泡立つ。

憎らしいのに、目の前のこの彼が好きで仕方なくて、どうしても諦めることなんかできないのは何故なんだろう。

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