無敵のスピカ

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「宏光くん、ずっと待ってくれてたんだよ
卒業式終わってから、すぐここに来てくれて」

おじいちゃんはかなり上機嫌で、私を手招きする。

なんか…、嫌な予感しかしない。

東京へ行く前の別れの挨拶？

それとも、許嫁契約破棄の謝罪？

恐る恐る彼の向かいのソファーに座ってみたけど、

「ちょっと2人で話したいことがあるから、2階のAちゃんの部屋に入っていい？」

とか言いながら、彼は席を立ってしまう。

…は？

なんで私の部屋？

だけど、うちの家族が「どうぞどうぞ」って勧めるもんだから、

とうとう彼は、私の部屋へ来ることになってしまった。

ああ…、なんで私は今朝、部屋を片付けなかったんだろう！









部屋に入った彼は、迷わずベッドに腰をかけた。

…いやいや、普通遠慮しない？

仮にも女の子の部屋なのに。

「話って何ですか」

部屋の真ん中に立ち尽くしたまま、無愛想に私はそう訊ねる。

「ちゃんと話しておきたくて
俺の気持ち」

いいのに、そんなのどうでも。

むしろ聞きたくないんだけど。

「Aちゃんはずっと、許嫁のことを嫌がってんだと思ってた
じいちゃんに俺との結婚の話をされて、いつも困った顔をしてたから」









「だから、Aちゃんを自由にしてあげたくて、女の子と遊びまくってた
わざとAちゃんに見せ付けるみたいに」

ほら、やっぱり。

やたらと目撃すると思ってたんだ。

「そうしたらAちゃんが俺に愛想を尽かして、断りやすくなるんじゃないかなって」

何それ。

意味わかんないんですけど。

「こう見えて俺、けっこう受け入れてたんだけど
Aちゃんとの結婚話」

「…嘘つき」

ようやく出た言葉がこれ。

だってそんな素振り、全く見せなかったじゃん。

「小さい頃からじいちゃんの刷り込みがすごくて
こんなんじゃAちゃんに嫌われるぞ、とか、
Aちゃんが嫁に来たら…、みたいな話ばっかで」









「俺はへそ曲がりだから、じいちゃんや親の言うことには反抗ばっかしてきたけど
Aちゃんのことは、ずっと将来の結婚相手だって認めてた」

そんなこと言われても、信じられないんだけど。

一体私は今、どんな顔をしてたらいいわけ？

「でも俺はやっぱり、人の言いなりになるのは嫌だから
Aちゃんに、ちゃんと伝えたくて
俺を振ってくれてありがとう」

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