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その日は結局、目覚ましのアラームが鳴ったことで、彼はあっさり布団の世界から出て行き。

身支度を整えてすっかり仕事モードの顔になった彼は、

「じゃあ、行ってきます」

って、まるで新婚の夫みたいな雰囲気で出て行った。

見送ってるのは私と、霞さん夫婦なんだけど。

だけど彼が出て行った途端に、2人の尋問が始まるわけで。

それから逃げるように、お礼を言って家を後にした。

なんていうか…、長い一日だった。

いろんなことがあり過ぎて、つい意志が緩んでしまうような瞬間もあったりで。

だけどやっぱり、今の私達はまだ付き合う段階にはないと思うんだ。









あれから、毎日のように彼からLINEが届く。

だけど、かなり仕事が忙しいみたいで、会うことはおろか電話もなく。

私も忙しさに追われて、気が付いたら十日くらいが過ぎた頃。

スマホに知らない番号から電話がかかってきた。

そこには霞さんもいて、しばらく2人してスマホの画面を見つめてみる。

「誰だろ」

「知らない番号?」

そんな話をしているうちに電話は切れ、

「間違い電話なんじゃないの?」

なんて話してたんだけど。

すぐにまた同じ番号から電話が入り、霞さんはわかりやすく顔を顰める。

「出てみたら?
何度もかけてくるってことは、大事な電話かもしれないよ」

そう言われて電話に出てみたら、聞こえてきたのは元彼の声だった。

「A、久しぶり」

…久々に聞いた声。

懐かしくも感じるけど、変に胸が騒ぐ。








思わず返事もせずに、霞さんに視線を向けた。

「聞こえてる?」

電話の向こうでそう聞かれて、思わず上擦った声で返事をしてしまう。

「あ…、うん」

「知らない番号だから驚いた?
最近、携帯の番号を変えたから」

「そうなんだ?」

ぎこちない私の様子を、霞さんは隣から心配そうに見守ってくれていた。

「いきなり電話してごめん
実は来週、学会で東京に行く予定なんだけど…、その時に会えないかなって」

「…何で?」

だって、私達に会って話す理由なんかあったっけ?

「Aに謝らなきゃいけないこともあるし、今後のAの進路についても相談に乗れるかなって」








「来週はちょっと…、忙しいかな」

咄嗟にそう答えてしまった。

「もしかして、もう彼氏とかいたりする?
迷惑だった?」

唐突にそう聞かれて、不意に彼の顔が頭に浮かんだけど、

「…いないけど」

私はバカ正直に、そう答えてしまった。

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りたわかめ(プロフ) - えぴさん» ありがとうございますm(__)m (2022年1月2日 21時) (レス) id: 9f29bca2de (このIDを非表示/違反報告)
えぴ - ほんとにリアルすぎて最高です! (2022年1月2日 18時) (レス) @page21 id: 06d564cdce (このIDを非表示/違反報告)
わかめ(プロフ) - えりさん» 本日、移行いたしました。えりさんをドキドキワクワクさせられますように(*'ω'*) (2020年2月7日 23時) (レス) id: 9f29bca2de (このIDを非表示/違反報告)
わかめ(プロフ) - renaruriさん» 更新いたしました。ちょっと急展開になってるかもです(/ω\) (2020年2月7日 23時) (レス) id: 9f29bca2de (このIDを非表示/違反報告)
わかめ(プロフ) - moraさん» やったー!いい感じに予想を裏切れてる?私w moraさんの予想を裏切れるよう頑張ります(*'ω'*) (2020年2月7日 23時) (レス) id: 9f29bca2de (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:わかめ | 作成日時:2019年9月28日 20時

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