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…もっと聞いていたい。
だけど、どんどん意識が遠のいていく。
「とりあえず、Aちゃん運ぶわ」
そんな声がして、彼の腕が脇と膝裏に添えられて、けっこう乱暴にグイッと体が宙に浮いた。
なんだか私の思い描いていたお姫様抱っことは、どこかテイストが違うみたいだけど、まあ悪くない。
そして私はもう、ハイボールは金輪際飲まないと決めた。
.
翌朝、けたたましく鳴るアラーム音で目が覚めた。
布団から手だけを出してスマホを探してみるけど、見つからなくて。
なのに勝手にアラームは止まる。
そっと布団から顔を出すと、部屋は薄暗くて、感覚的に自分の部屋じゃないということはわかった。
カーテンから漏れ入る光で、ここが霞さん家の和室だということに気付き、そして、
くっつけられて敷かれたもうひとつの布団には、しかめっ面で眠ってる彼の姿が見えた。
…結局、ここに布団を敷いちゃったわけ?
しばらくしたらまたスマホのアラーム音が鳴り出して、彼は眉間に皺を寄せてスマホに手を伸ばした。
このアラーム、北山くんのスマホからだったんだ。
アラームを止めると、安心したような顔つきになって三度寝を始める彼を慌てて揺り起こした。
「北山さん、起きて
仕事なんじゃないの?」
彼の寝起きはいつも不機嫌で、その日も最大級に機嫌の悪い顔をして、薄目を開く。
そしてそのままぐいっと私の腕を引くと、強引に自分の布団の中に引きずり込んだ。
布団の中、隙間もないくらいに私を抱き寄せては、
「…おはよ」
腰に響くくらいの低音で、朝の挨拶をしてくる。
しかも耳元に唇を寄せた状態で。
「時間、大丈夫?」
「…大丈夫
スヌーズで何個もアラームセットしてるから
本当に起きる時間は、30分後
だから、しばらくこうしといて」
そう言ったきり、彼は急に静かになる。
…もしかして、本当に寝ちゃった!?
そのうち本当に寝息が聞こえてきたから、ガチ寝なんだと思う。
それにしてもガチ寝のくせに、こんなにギュウギュウに抱きつかなくてもよくない?
5分後、再びアラームが鳴り始めたことで、背中に回された彼の腕が外されて、ようやく私は解放されたと思ったのに。
秒速でまた、その腕は強く背中に絡みついてくる。
「もう起きなよ」
そう言ってるのに反応なし。
だけど私の首筋に頬をうずめたまま、彼は聞こえないくらいの声で呟いた。
「…絶対に離さない」
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りたわかめ(プロフ) - えぴさん» ありがとうございますm(__)m (2022年1月2日 21時) (レス) id: 9f29bca2de (このIDを非表示/違反報告)
えぴ - ほんとにリアルすぎて最高です! (2022年1月2日 18時) (レス) @page21 id: 06d564cdce (このIDを非表示/違反報告)
わかめ(プロフ) - えりさん» 本日、移行いたしました。えりさんをドキドキワクワクさせられますように(*'ω'*) (2020年2月7日 23時) (レス) id: 9f29bca2de (このIDを非表示/違反報告)
わかめ(プロフ) - renaruriさん» 更新いたしました。ちょっと急展開になってるかもです(/ω\) (2020年2月7日 23時) (レス) id: 9f29bca2de (このIDを非表示/違反報告)
わかめ(プロフ) - moraさん» やったー!いい感じに予想を裏切れてる?私w moraさんの予想を裏切れるよう頑張ります(*'ω'*) (2020年2月7日 23時) (レス) id: 9f29bca2de (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:わかめ | 作成日時:2019年9月28日 20時