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二次会はその後すぐにお開きになり、みんな駅へ向かって歩いていく中、

北山くん達はみんな、タクシー乗り場にいた。

私と霞さんもタクシーに乗ろうと、その後ろの方にしれっと並んでたんだけど。

やっぱり彼女は、彼のいる輪の中に入ろうとしては断られていた。

踵を返した彼女は、まっすぐ私達の方へ向かって歩いてくるから、私はわざとらしく視線をスマホに移した。

「あの!」

私達に向かって声をかけてくるから、仕方なくゆっくりと視線を彼女に向ける。

「タクシー、ご一緒していいですか?」

それは挑戦的にも取れる言い方で、「いいよ」なんて簡単に答える気には到底なれなかった。

「何で?」

感情を押し殺した声で、霞さんが聞き返す。

きっと、内心マグマのように怒り狂ってるんだろうな。

その横顔を見ているだけでわかる。

「北山さんと同じ所へ行くんですよね?
ご一緒していいですか?」

この強心臓、正直見習いたい。

空気が読めないんじゃなくて、空気を読んだ上でこうして強気で言えるって、すごいことだと思う。

「悪いけど、私達は家に帰るだけだから」

「本当ですか?」

「本当だし、もし北山くんと同じ場所に行くとしても、あなたは連れて行かない」

霞さんはそう言い切って、それきり彼女が何を言おうが無視を貫いていた。

私は彼女のように自分に自信がある訳でもないし、霞さんのようにハッキリ拒絶もできない。

私は本当に不甲斐ない。

だから北山くんのような人にも、都合よく扱われてるんだろうか。








ようやく乗れたタクシーの中、霞さんはずっとご機嫌斜め。

「北山くんのファンでもないくせに、よくあそこまでしつこくできるよね
その執念が怖いわ」

「でも…、私は少し羨ましいですけどね
あそこまで強気になれるって、すごくないですか?」

正直にそう告げたら、霞さんは何故か急に泣きそうな目になって、いきなり私の頭を撫ではじめた。

「Aちゃんは、もっと自信を持っていいんだよ
北山くんもそれを心配してた
私はAちゃんのことを、いつも母親目線で見てるから、そこんとこが心配でならないんだよね
Aちゃんには幸せになって欲しいって、心から思ってるんだよ」

霞さんが本当に私の母親だったら、私はもっと違う人生を歩んでただろうな。

愛をいっぱいに受けて育っていたら、きっと私は今、北山くんとこんな曖昧な関係を続けてるはずがない。

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りたわかめ(プロフ) - えぴさん» ありがとうございますm(__)m (2022年1月2日 21時) (レス) id: 9f29bca2de (このIDを非表示/違反報告)
えぴ - ほんとにリアルすぎて最高です! (2022年1月2日 18時) (レス) @page21 id: 06d564cdce (このIDを非表示/違反報告)
わかめ(プロフ) - えりさん» 本日、移行いたしました。えりさんをドキドキワクワクさせられますように(*'ω'*) (2020年2月7日 23時) (レス) id: 9f29bca2de (このIDを非表示/違反報告)
わかめ(プロフ) - renaruriさん» 更新いたしました。ちょっと急展開になってるかもです(/ω\) (2020年2月7日 23時) (レス) id: 9f29bca2de (このIDを非表示/違反報告)
わかめ(プロフ) - moraさん» やったー!いい感じに予想を裏切れてる?私w moraさんの予想を裏切れるよう頑張ります(*'ω'*) (2020年2月7日 23時) (レス) id: 9f29bca2de (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:わかめ | 作成日時:2019年9月28日 20時

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