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霞さんの話はいつも華やかで、私とは全く違う世界を生きてるんじゃないかなと思うくらい。
だって屋形船を貸切とか、遠い異国の話のように聞こえる。
「その時にAちゃんの話題が出たんだよ」
あの変人T大女はどうしてんの?的な?
「北山くんが『今日はAちゃん来てないの?』って、聞いてくるからさ」
いつもの何気ない会話だと思って、もう少しでスルーしてしまうところだった。
…待って!
今、何て言った!?
その屋形船貸切ツアーに、北山くんもいたってこと!?
「私もAちゃんを呼びたかったんだけどさ、今回は野外だし
未婚の年頃女子が紛れてることで、写真でも撮られて週刊誌に載ったりなんかしたら北山くんに迷惑がかかるから、誘わなかったんだよね」
霞さん、それ正解です!
絶対、私なんか呼んじゃいけません!
「でね、またうちで飲み会することになったのよ
急だけど来週末の夜、Aちゃんの予定どうかな」
本当なら本能のままに「行きます!」って即答したいところだけど。
もう私は彼に会わない方がいいと思うんだ。
今なら戻れるはずだから、北山宏光を心から愛するファンの1人に。
「来週末はちょっと…」
心を鬼にして、無表情で断りの文句を口にしていた。
「えー?もうAちゃん連れて来るって言っちゃったのに」
霞さんは可愛らしく唇を尖らすけど、今回だけは首を縦には振れなかった。
「やっぱり私、ああいう集まりは苦手で…」
「別に誰かと恋愛しろって言ってるわけじゃないし
軽い気持ちで来なよ」
「でも…、」
「特に北山くんなんか話しやすいし
ほら、あの子はアイドルだし恋愛はできないんだから、男子の免疫つけるつもりでおいでよ
白衣で眼鏡男子だらけのここにいるより、世界が広がるよ?」
そんな風に熱心に口説き落とされて、また私は、霞さんの家に来ることになった。
私の定位置は、この間と同じ壁際の椅子。
今日は金曜日だから、夕方6時からのスタートで。
みんな仕事が終わり次第、やって来るらしい。
当然、北山くんも。
夜の8時を過ぎた頃、
「お邪魔しまーす」
家の玄関方向から、彼の声が聞こえてきた。
…ああ、また始まってしまった。
また私は北山くんと、まるで異世界みたいな幸せな時間を過ごすことになるんだ。
もういっそのこと修復不可能なくらいに、私のこと嫌いになって、軽蔑でもしてくれないかな。
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18rf(プロフ) - わかめさん» わあ!返信有難うございます!!なるほど、そうだったんですね!!主人公ちゃんの気持ちすごいわかるなあ、北山さんに触れたい!!って毎回なってます笑これからの展開たのしみにしてますね!! (2019年7月30日 0時) (レス) id: 6b95d259ee (このIDを非表示/違反報告)
ふう(プロフ) - わかめさん» 返信ありがとうございます!沢山連載あるのに更新ありがとうございますTT (2019年7月22日 23時) (レス) id: 24794ead76 (このIDを非表示/違反報告)
わかめ(プロフ) - ふうさん» コメントありがとうございますm(__)mそんなこと言っていただいてうれしいです(/ω\)今夜も更新しようと頑張ってますが、もう既に眠いのでくじけるかもしれませんが、どうぞよろしくお願いしますm(__)m (2019年7月21日 22時) (レス) id: 9f29bca2de (このIDを非表示/違反報告)
わかめ(プロフ) - アップルさん» そんなことと言っていただいて、ありがとうございます!ご褒美だとか、本当にもったいないくらいです。夜桜と北山くん、かなり素敵だと思われます!どうぞこれからもよろしくお願いしますm(__)m (2019年7月21日 22時) (レス) id: 9f29bca2de (このIDを非表示/違反報告)
わかめ(プロフ) - 18rfさん» はじめまして、コメントありがとうございます。毎回気になるところで終わりますよねwでもこれ、実は自分のためなんです。次を書きたくなるようなところで終わらせておかないと、次に書く気がなくなっちゃうので(/ω\) (2019年7月21日 22時) (レス) id: 9f29bca2de (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:わかめ | 作成日時:2019年6月25日 22時