花朝月夕

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あれから半年が経った。

季節は夏を過ぎ、もう冬にさしかかっていて。

その間、何度かホームパーティー等のお誘いはあったけど、全て潔く断った。

この半年間、私にはちょっとした変化があり、

実は、毎年通っていたコンサートに、今年は1公演も行かなかったんだ！

チケットは当たってたけど、全部友達に譲って。

DVDや出演番組も徐々に見る機会を減らしていって、少しずつ担降りの準備を進めていた。

正直、北山くんを見るのが辛いから。

これ以上プライベートの北山宏光に接したら、「もっと近づきたい」とか「好かれたい」とか、変な欲が出てきそうだから。









「この週末、鍋パーティーしたんだよ」

ランチタイムに霞さんはいつも、週末の報告をしてくれる。

「今回は少人数で、家の中でね
うち、掘りごたつとかあるからさ」

「掘りごたつ、いいですねー」

「Aちゃんも遊びにおいでよ」

軽い感じでそう誘われたから、つい私も、

「行きます」

なんて、軽く答えてしまう。









「北山くんがさー…」

不意に出てきた彼の名前に、変な感じに心臓がざわつく。

「最近Aちゃんが来ないって寂しがってたよ」

…出た。

またそれですか？

ただ曖昧に愛想笑いを浮かべる私に、

「北山くん気にしてたよ
俺が強引に篠原を紹介したりしたから、来なくなったんじゃないかって」

って、霞さんは心配そうな顔をする。

篠原…って、誰ですか？

もしかして、この間北山くんが紹介してくれた人？

「全然関係ないですよ、それ」

だって、名前も覚えてなかったのに。








でも、もう忘れられてると思ってた。

まだ北山くんの記憶の中には、私が存在してたんだ。

「北山くん、Aちゃんが可愛くて仕方ないみたいよ
頑張ってるから報われて欲しいとか、なんか熱いこと言ってたわ
北山くん、酔うと熱くなってウザキャラになるんだよね」

霞さんはくすくす笑ってるけど、私はずっと真顔でそんな話を聞いていた。

…それって、どういう意味ですか？

可愛くて仕方ないとか、本当にそれは彼の口から出た言葉なのか。

それとも霞さんがそう思って出た言葉なのか。

…なんか、泣きそうなんですけど。

それも今すぐに。

あんな嘘、つかなきゃよかった。

北山くんに本当のことを打ち明けて謝ったら、私は楽になれるのかな。

だけど私は確実に、彼に嫌われてしまうだろう。

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