花朝月夕

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慌ただしい１２月が今、まさに終わろうとしている。

唯一のヲタ友である藤ヶ谷担の朋が、昨日の夜からずっと泊まりに来ていて、

紅白もガキ使も見ないで、昼過ぎからキスマイのＤＶＤを見ながら飲み会中。

…正直、久々に見た北山くんの姿に、胸がウズウズと変な感じにときめていていた。

「ねえ、本気で担降りする気？」

朋とは十年来の付き合いで、元々この世界に私を引きずり込んだのは彼女だ。

彼女は今、都内の商社で忙しく働いていて、年末年始のこの時期だけ、こんな風に部屋に泊まりにくる。

「…する」

「何？もしかして彼氏でもできた？」

「違うって」

「黙ってたんだけどさ
今年Aに譲ってもらった席、アリーナだったんだよね」

…マジか。

この十年間、一度だってアリーナに降りたことなんてなくて。

いつかあそこに降りてみたいって、ずっと思ってたのに。

やっぱり私には縁ってやつが、なかったみたいだ。









「あ、テレビに替えていい？」

ああ…、もうカウントダウンの時間か。

「やっはりこれを見ないと、一年が終わんないよね」

突然、画面に大写しされた北山くんのアップに、痛いくらいに胸が疼いた。

…ヤバい。

やっぱり私はまだ、北山くんのことが好きだ。

しばらく遠ざけてたから、もうだいぶ気持ちも薄れてきただろうと思い込んでたのに。

…変に時間を空けた分、完全に逆効果だったみたいだ。

「あのさ…、もし藤ヶ谷くんとプライベートで知り合う機会があったらどうする？」

そんな私の突拍子もない質問も、

「そんなのあるわけないじゃん」

朋にバッサリ、秒殺されてしまう。

「例え話だって」

「あー、妄想的な？」

「そうそう
もし友達の集まりの飲み会に行って、そこに藤ヶ谷くんがいたらどうする？」

「そりゃ、お近づきになるでしょ」

「どんな風に？」

「うーん…、藤ヶ谷くんはがっついてる女子は苦手そうだから、自分からは声を掛けないかも
さりげなく料理の取り分けなんかしてる私の様子を眺めさせる」

「それから？」

「観察するよね、藤ヶ谷くんの様子を
じっと見てて、視線に気付かれたら、さっと目線を外してみたり
あなたのことが気になってますよ、ってアピールとかして、
で、いいタイミングでトイレに立つの」

「何の為に？」

「２人きりになれる時間を作ってあげんの
トイレから出てきたら、藤ヶ谷くんが待ってんのよ、トイレ前の廊下で！」

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