花朝月夕

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「最近行ってる？
霞さんの家」

「行ってないです」

「俺も
なんか最近、忙しくて」

そこでまた、会話が途切れる。

なんか、今日の北山くんは変だ。

いつもより余裕がない感じで、ちっとも隙を見せてくれない。

「Aちゃんに会えてよかった」

ってほら、また作り笑顔で。

そして私は、その笑顔を直視できなくて、中途半端に視線を下げる。









「お花見、誘われなかった？
霞さんに」

「誘われました」

「行かないの？」

「…行かないです」

「俺がいるから？」

その言い方があまりに切なげだったから、ふと視線を上げたら、今度は彼に外されてしまった。

「俺は行かないから、安心して行ったら？」

その言い方にほんの少しだけ自虐が入ってたからか、きゅーっと胸が苦しくなる。

「お花見とか興味ないから」

彼を慰めるつもりでそう言ったのに、

「今、見てんのに？」

って、鼻で笑われてしまった。

「拗ねてんだけど、俺
そんなに嫌われてんのかなって」

その言葉に、何かがプチンと脳内で弾けた。









「違うよ、嫌いじゃない」

彼はようやく視線を戻してくれたけど、

「じゃあ、何で避けんの？」

今度は射るような目付きで、私を見つめてくる。

私の目の奥から、感情を読み取るみたいにして。

「だって、いろんな人に迷惑がかかるし」

「何でそう思うの？」

「だって、霞さん達が…」

「霞さん達はAちゃんに来て欲しくて、ずっと誘ってんのに」

なんだか、私が責められてるみたいになってない？

だからなのか、急に私の勢いは萎んでしまって、

「…ごめんなさい」

そう謝る結果になってしまった。









「何で謝んの？」

「北山さんのこと、怒らせちゃったから」

「怒ってない、寂しいだけ
俺はAちゃんと、もっといろんな話がしたいだけなのに」

「…何でですか？」

そんなことを言ってしまう私は、相当可愛くない。

わたしが男ならこんな女、面倒くさくて関わりたくもないと思う。

「興味がある、って言ったら怒る？」

興味があるって、なんていい加減な言葉なんだろう。

何とでも解釈できるから、嫌い。

「それに、気になるから
Aちゃんという人間が
恋愛感情は抜きにしても」

「抜きにしても？」

どうしてもスルーできなかった。

彼の口から出た「恋愛感情」という単語が、私の胸をざわつかせたから。

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