花朝月夕

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「罰としてあっちで私のお酌をしなさい」

女王様気質の霞さんにそう命じられた彼は、すんなりと掘りごたつの席に移動してしまい、

私はその後、朋や周りの人達と話をしていたけど、実はずっと痛いくらいの視線を感じていた。

それは、さっきからちっとも笑ってない霞さんの旦那さんからで。

直接何かを言ってくることはないけど、その威圧感は相当なもの。

だから私は、北山くんをチラ見することすら出来ないでいた。

掘りごたつの方からは、楽しそうな彼の笑い声が聞こえてくるけど、

無言の監視はずっと続いていた。









なのに1時間ほど経った頃、トイレから帰ってきた私の席に何故か彼が座っていて、

更に私の飲みかけのビールまで飲んでるし！

これは一体、どういうこと！？

隣に座られちゃった朋も、心なしか緊張の面持ちになっているし。

どこに座ったらいいのか迷っている私に気づいた彼は、手招きで、

「Aちゃん、ここ」

って、朋との間の席を勧めてくるけど…。

狭すぎじゃね？

テンパった私は何故か、向かいの旦那さんの隣に座ってしまった。

「何でそこ？」

って彼は笑ってるけど、隣に座ったら、旦那さんからの無言の威嚇がますます激しくなるだろうし。

仕方なくだよ。









「宏光、Aちゃんに甘えすぎ
Aちゃんは嫁入り前の娘さんなんだから」

旦那さんは冗談混じりで彼に苦言を呈するけど、目は全く笑っていない。

てか、「嫁入り前の娘」という表現につい吹き出しそうになったんだけど。

「飲んでると、ついAちゃんに絡みたくなっちゃうんだよね
何やっても許してくれるような気がして」

…って、相当酔ってるよね？

いい感じに目が据わっちゃってるじゃん。

でも旦那さんはちっとも笑ってないし、朋も難しい顔でそんな彼の話を聞いていたけど、

酔ってユルユルの、彼の話は終わんなくて。

「Aちゃんといると、なんかワクワクする
考え方が普通の女の子とは違ってて、新鮮」

そう言い残して彼は、机の上に突っ伏して2度目のお休みタイムに入ってしまった。

よく考えたら、私がいつも会ってるのは、酔ってる時の北山くんばかりで。

シラフの彼がどんな感じなのか、よく知らないかも。

酔ってるから、こんな大胆な行動に出るのかな。

…って、ちょっと待って！？

さっき私にお土産をくれて手を握ってきた北山くんは、もしかしてシラフじゃなかったっけ？

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